人格障害(読み)ジンカクショウガイ

百科事典マイペディア 「人格障害」の意味・わかりやすい解説

人格障害【じんかくしょうがい】

人格がゆがむ病気のこと。時代や社会状況によってその定義は変わり,現在でも分類,原因,治療法などで多くの仮説があるが,アメリカ精神医学会の分類では主に次のような種類がある。(1)妄想性人格者 他人の悪意のないささいな,あるいは親切でさえある行為の裏に,敵意と悪意があると感じる。仲間と違う肉体的欠陥ハンディキャップ,慢性聴覚障害を持つ人に起こりやすい。自分の障害のために,現実的に物事を検討する能力が低下して,人に嘲笑されていると誤解するということが起こりがちである。(2)演技性(ヒステリー性)人格者 他人からの尊敬と賛美を手に入れるため,注目を集めるような芝居がかった態度を示し,行動に一貫性がない。表面的な人間関係は簡単につくれるが,感情的に深い関係を築くことはまれで,多くの人々と乱交することがある。(3)自己愛性人格者 自分の重要性を過大評価し,果てしない成功の空想にふけり,過度の自己理想化と卑下の間を激しく揺れ動いている。自己顕示によって他人の関心を引きつけようとし,押しつけがましく,他人を利用したりする。(4)反社会性人格者 衝動的,無責任,不道徳な性格で,すぐに満足感を求める。他人と持続的で豊かな関係を築けないが,とても魅力的で口先がうまいことがあり,自分の目的のためにそうした資質をうまく利用する。欲求不満をあまり我慢できず,反対されると敵意や攻撃的態度をみせる。また,こうした反社会的な行為を他人のせいにして,後悔や罪の意識を持たない。(5)境界性人格者 自己イメージ,気分,行動,対人関係を含む多くの面で不安定である。頻繁に気分が変わり,激しく怒ることもある。物事を極端なまでに白黒はっきりとさせ,中間がない。あいまいな身体的愁訴を訴えて来院することが多い。(6)回避性人格者 人から拒絶されることを恐れ,対人関係を築くことをためらうが,他人に愛され,受け入れられることへの強い欲求がある。(7)依存性人格者 生活の大部分を他人に依存し,彼らの欲求を自分よりも優先させる。自信と自発性がなく,一人でいることに強い不安を感じる。(8)強迫性人格者 向上心旺盛だが,完璧主義で自分の実績に満足感をもてない。信頼できて頼りになり,几帳面な性格だが,慎重で多くの面から物事を考えるため優柔不断なこともある。障害が重篤でなければ,学術研究などの分野で高いレベルの業績をあげうるが,一方で孤立感や対人関係で悩むことも多い。 人格障害の原因は,両親の不和や愛情の欠如,孤独,いじめられた体験などが考えられている。治療は専門医によるカウンセリングが中心だが,向精神薬などで感情をコントロールすることが必要な場合もある。
→関連項目境界型人格障害境界例

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家庭医学館 「人格障害」の解説

じんかくしょうがい【人格障害 Personality Disorder】

[どんな病気か]
 人間は、健康な人でも性格上の特徴や偏(かたよ)りをもっており、それが個性をつくっていますが、その偏りが大きすぎると、不適応をきたすことがあります。
 性格の分類にはさまざまなものがあります。一般によく知られている血液型星座などによる分類は、科学的にはあまり意味がありません。しかし、性格を総合的に判断するのは、科学的にもたいへんむずかしいものです。過去には、やせ型分裂気質(ぶんれつきしつ)、肥満型は循環気質(じゅんかんきしつ)、筋肉質の闘士型はてんかん気質というように、体型と気質を結びつける考え方もありました。
 最近は、対人関係や社会適応に重点をおいて判断し、不適応をきたしやすい場合を人格障害(パーソナリティー障害)と呼んでいます。「人格」障害といっても、欠陥人間や犯罪者という意味ではありません。精神症状ではなく、対人関係などのあり方で定義されるので、「人格」障害と呼ぶのです。人格障害は長く続くものです。思春期以降明らかになり、成人期を通じて、本人にとって、職業的にも、社会的にも、日常生活面でも大きな困難をもたらします。種類によっては、本人より周囲の人たちが困難を感じることもあります。
 種類としては、妄想性人格障害(もうそうせいじんかくしょうがい)、統合失調質人格障害、統合失調型人格障害、演技性人格障害(えんぎせいじんかくしょうがい)、反社会性人格障害(はんしゃかいせいじんかくしょうがい)、自己愛性人格障害(じこあいせいじんかくしょうがい)、境界性人格障害(きょうかいせいじんかくしょうがい)、強迫性人格障害(きょうはくせいじんかくしょうがい)、依存性人格障害(いぞんせいじんかくしょうがい)、回避性人格障害(かいひせいじんかくしょうがい)などが知られています。その人の属している社会の価値観によって、ある種の人格障害を受け入れにくかったり、寛容であったりする特徴があることもあります。
[治療]
 人格障害そのものの治療を希望して精神科を受診するケースは多くありません。人格障害の人は、生活上の変化やストレスに弱いことが多いので、うつや摂食障害(せっしょくしょうがい)などの精神症状を現わし、そこで初めて精神科を受診することが多いものです。
 性格や人格を変えるというのはたいへん困難なことで、少しずつ適応できるよう援助するだけでも長い時間がかかります。ただし、人格障害の人にみられる不安、衝動性などには薬物療法が有効な場合もあります。少しずつセルフコントロールができていくように気長に治療を続け、社会生活も広げていく必要があります。
●家族の対応
 人格障害の患者さんは、治療についても、非現実的な過大な期待をもったり、少しでも期待が裏切られると治療を放棄したり、病院を転々としたりしがちです。継続的に治療を続けることが望ましいのですが、それが困難な場合は、少なくともなにか精神的変調や小さな危機があったときは早めに精神科を受診してください。こういう場合に大きな危機にならないよう、援助を受けることについては主治医とも家族とも、あらかじめ意見を一致させておくのが望ましいのです。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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