化学辞典 第2版 「胎盤ホルモン」の解説
胎盤ホルモン
タイバンホルモン
placental hormone
胎盤由来で,妊娠の成立と維持に不可欠なホルモン.絨毛性性腺刺激ホルモンchorionic gonadotropin(ヒトのものはhCGないしはHCGと略称される)やエストロゲン様,プロゲステロン様作用を有するホルモンなどが含まれる.胎盤の絨毛細胞trophoblastから分泌されるhCGは,妊娠時に血中および尿中量がいちじるしく増大するので,妊娠の診断に用いられる.hCGは92個のアミノ酸残基からなるαサブユニットと,145個のアミノ酸残基からなるβサブユニットからなる.hCGと似た構造を有するホルモンとして,下垂体前葉ホルモンである甲状腺刺激ホルモンTSH,卵胞刺激ホルモンFSH,黄体形成ホルモンLHがある.αサブユニットは4者に共通であるが,βサブユニットはそれぞれ異なるゆえ,特異性を高めるためにhCG-βサブユニットの測定キットも開発されている.また,出産により胎盤がなくなると,hCGのみならず,胎盤から分泌されていたプロゲステロンやエストロゲンが急激に減少し,情緒不安定(マタニティーブルー)になることもある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報