エストロゲン

デジタル大辞泉 「エストロゲン」の意味・読み・例文・類語

エストロゲン(estrogen)

主に卵巣から分泌される雌性ホルモンステロイドホルモンの一種。発情を誘発し、生殖腺乳腺などの発育や第二次性徴の発現を促進する作用がある。エストラジオールエストロンエストリオールなど。発情ホルモン濾胞ろほうホルモン卵胞らんぽうホルモン。

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精選版 日本国語大辞典 「エストロゲン」の意味・読み・例文・類語

エストロゲン

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] estrogen ) 女性ホルモンの一群。卵胞より分泌され、女性性徴の発現、性器の発育を促す。

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内科学 第10版 「エストロゲン」の解説

エストロゲン(加齢とホルモン/ホルモン補償療法)

(4)エストロゲン(estrogen)
 卵巣性のエストロゲン,特にエストラジオール(E2)の分泌が閉経を境に急激に低下することはよく知られた事実であり,その閉経前後の約10年間を更年期とよぶ.更年期障害は,閉経前後のホルモン変動によりもたらされ,無症状の場合もあるが,典型的にはほてり,のぼせといった血管拡張症状,気分変動,うつ,不安,焦燥感,不眠といった精神症状,また膣萎縮による性交痛,腹圧性尿失禁などの諸症状を呈する.長期的な意味では,エストロゲン欠乏は骨粗鬆症,脂質異常症(特に高LDL血症),冠動脈疾患の増加をきたす.複数の観察研究においてエストロゲン補充療法単独またはプロゲスチンとの併用療法を行った閉経後女性は,更年期症状の改善とともに,無治療閉経後女性に比べて冠動脈疾患のリスクが低いとされてきた.しかしながら,冠動脈疾患を有する閉経後女性における冠動脈硬化の進行または心血管疾患のリスクに対する有用性を無作為比較対照試験で検討したHeart and Estrogen/progestin Replacement Study (HERS)およびWomen’s Health Initiative(WHI)の成績が公表された結果,いずれの試験でも予想に反してホルモン補充療法群の女性で急性冠疾患のリスクが早期に上昇し,しかも副作用としての静脈血栓症や乳癌などの増加が報告された. 一方,エストロゲン補充療法の好ましい効果として結腸癌や骨折の減少が確認された.上記WHIの結果は,エストロゲン補充療法の有効性に対する懐疑的論争をよんだが,解析対象者が比較的,高齢であった問題点や併用プロゲスチン製剤の弊害の可能性が指摘されていた.その後のWHIの年齢別の再解析結果では,ホルモン補充療法が50歳未満,あるいは閉経後年齢が10年未満であれば,心血管疾患を予防する傾向が示され,乳癌リスクに関しても60歳未満の施行であれば大きなリスクはないとする解析結果も報告された. 子宮内膜癌や乳癌のリスクを増加させることなく,閉経後骨粗鬆症に対する骨折予防効果を発揮する選択的エストロゲン受容体モジュレーター(selective estrogen receptor modulator:SERM) も開発されたが,更年期症状に対する症状改善効果はエストロゲン製剤に比べて,明らかに弱いことが判明している.現在,更年期以降のホルモン補充療法に関して,更年期症状の緩和効果は確立されており,年齢を考慮した期間限定あるいは少量のエストロゲン製剤の投薬法や天然型プロゲスチン製剤の選択,長期的な意味でのSERMの活用など,リスク-ベネフィットを考慮した適切な施行方法が模索されている現況である.[柳瀬敏彦]
■文献
岩本晃明,他:日本人成人男子の総テストステロン,遊離テストステロンの基準値の設定.日泌尿会誌,95: 751-760,2004.
Roth GS, et al: Biomarkers of caloric restriction may predict longevity in humans. Science, 297: 811, 2002.
柳瀬敏彦,村瀨邦崇:アンチエイジングとしてのホルモン補充療法− GH, DHEA, テストステロン−. 臨床と研究,87: 515-520, 2010.

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改訂新版 世界大百科事典 「エストロゲン」の意味・わかりやすい解説

エストロゲン
estrogen

雌の動物に発情estrusを起こさせるものという意味で,一群の雌(女)性ホルモンをさし,発情ホルモン,卵胞ホルモン濾胞ホルモンともよばれる。動物体内で分泌されるエストロゲンはすべてステロイドで,A環はフェノールである。分泌期のヒト卵胞中には,エストロンestrone,エストラジオール-17β estradiol-17β,エストリオールestriolが見いだされ,このうちエストラジオール-17βが分泌量,生物活性ともに最も高い。エストロゲンは主として卵巣から分泌され,その分泌はLH(黄体形成ホルモン)によって刺激される。他のステロイドホルモンと同様に,標的細胞の細胞質中に存在する受容体に結合して核に移り,細胞の機能を制御する。作用としては,子宮の発達,子宮内膜・乳腺の発達,その他の二次性徴の促進,脂肪合成の増加,肝機能や骨代謝への影響などがある。男でも,睾丸でわずかながらエストロンが合成され,副腎皮質から分泌されたアンドロステンジオールがわずかにエストロンに変換される。

 エストラジオール-17βは,主として卵巣で生成分泌されるが,生体内で酸化されてつくられるエストロンと相互に可逆的に変化し,水酸化によってエストリオールを生成する。エストロゲン中,女性ホルモンとしての活性は最も大きく,妊娠中は胎盤でも大量に生成される。エストロゲンとして共通の作用のほか,思春期や閉経前期の月経周期の支配に大きな役割を果たし,にきびの発現,長管骨の骨端線部への作用,水分と食塩の保留作用もある。製剤としては,閉経期の諸障害,月経困難,機能性子宮出血,卵巣機能障害,骨多孔症や乳汁分泌抑制などの治療に用いられるが,より活性が大きく,体内で非活性化されにくいエチニルエストラジオールやジエチルスチルベスチロールなどの合成エストロゲンが用いられる。エストロンの生成は,FSH(卵胞刺激ホルモン)に支配され,環状AMP(アデノシン-1-リン酸)が関与する。作用はエストラジオール-17βよりも弱く,かつて卵巣発育不全や機能低下に用いられたが,現在では合成エストロゲンが用いられるようになった。1928年ツォンデックB.Zondekが妊婦尿中に大量に排出されることを見つけ,翌年ブテナントA.F.J.ButenandtとドイジーE.A.Doisyらが別個に単離に成功し,48年に全合成された。エストリオールは,エストロゲンとしての作用はエストロンよりも弱いが,妊婦の尿中に大量に排出され,胎盤や胎児の副腎皮質の状態を反映するところから,その排出量が胎児胎盤機能検査に用いられる。
性ホルモン
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百科事典マイペディア 「エストロゲン」の意味・わかりやすい解説

エストロゲン

発情ホルモン,卵胞ホルモンとも。女性ホルモンの一つ。主として卵胞から分泌され,一部は副腎皮質,妊娠時には胎盤でも造られる。いずれもC18ステロイドで,エストラジオール,エストロン,エストリオールの3種が知られる。雌性生殖器官,特に輸卵管,子宮,腟(ちつ)などの発達に密接に関係し,哺乳(ほにゅう)類では発情を誘起させる。製剤として,更年期障害,月経困難,卵巣機能障害などの治療に用いられるが,現在では合成エストロゲンを使うのが一般的。
→関連項目緊急避難避妊法ステロイドホルモン代替療法腟内リング低用量ピルドイジホルモン補充療法

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エストロゲン」の意味・わかりやすい解説

エストロゲン
estrogen

エストロジェン,発情ホルモンともいう。エストロン,エストラジオール,エストリオールなどの卵胞ホルモンの総称。スチルベストロールなどの合成ホルモンを含めていうこともある。卵胞ホルモンのおもな作用は,子宮などの女性性器の発育促進,第2次性徴の発現,子宮内膜の増殖などで,「女性を創るホルモン」といわれる。その分泌は卵胞刺激ホルモンに支配される。

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栄養・生化学辞典 「エストロゲン」の解説

エストロゲン

 発情作用を示すホルモンの総称.いわゆる女性ホルモン.卵胞ホルモンともいう.女性の第二次性徴,子宮内膜の増殖,その他を制御するステロイドホルモン.代表的なものにエストラジオール,エストロン,エストリオールなどがある.卵巣が主たる分泌器官.

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化学辞典 第2版 「エストロゲン」の解説

エストロゲン
エストロゲン
estrogen

[同義異語]発情ホルモン

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エストロゲン」の意味・わかりやすい解説

エストロゲン
えすとろげん

エストロン

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世界大百科事典(旧版)内のエストロゲンの言及

【乳房】より

…女性の乳房も子どものときは男性のそれとほとんど変わらないが,後しだいに発育し,ことに思春期に入ると急に膨らみを増す。これは下垂体前葉の性腺刺激ホルモンの分泌が増加し,それによって卵巣が活動しはじめて,エストロゲンestrogen(女性ホルモンの一つ)を盛んに分泌するためである。妊娠すると胎盤から分泌される多量の女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の作用で乳腺はさらに発育し乳房が大きくなり,乳輪の色素が増加する。…

【月経】より

…卵胞刺激ホルモンは卵胞を刺激して卵胞を成熟させる。卵胞からは卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌されるが,排卵直前にピークとなる。この多量のエストロゲンが間脳・脳下垂体にポジティブフィードバックし,黄体形成ホルモンが急に多量分泌される。…

【ゴナドトロピン】より

…女子では,FSHは卵巣に働いて原始卵胞の発育をうながす作用をもつ。LHは,FSHとともに卵胞の発育を促進するだけでなく,女性(雌性)ホルモン(エストロゲン)の産生と分泌を刺激する。FSH,LHによって完成された卵巣の成熟卵胞は,月経中間期におこる脳下垂体前葉からの急激なLHの分泌に反応して排卵をおこし,黄体が形成される。…

【子宮頸管粘液】より

…子宮頸管中を満たしている粘液。頸管粘膜の上皮細胞から分泌され,卵巣ホルモンである卵胞(または濾胞)ホルモン(エストロゲン)により増量し,黄体ホルモン(プロゲステロン)により分泌が抑制されるので,月経後しだいに増量して,排卵直前に最高の400mm3くらいに増加し,水分量,果糖,ブドウ糖などもこのときに増加し,精子が子宮頸管を通って子宮内に進入するのを助ける。排卵後黄体期に入ると急減してゼロに近くなり,妊娠中も少ない。…

【女性ホルモン】より

…女性における性ホルモンで,広く動物をも含めて一般的にいう場合には雌性ホルモンという。女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類がある。女性特有のものである精子の受入れ,着床,妊娠の維持や分娩,授乳などを支配しているのは女性ホルモンであるが,また,このホルモンは女性の二次性徴の発達や維持のために重要な役割をはたしている。…

【性ホルモン】より

… 女性ホルモンは主として卵巣の卵胞,黄体で合成,分泌される。大別してエストロゲンプロゲステロンとがある。成熟婦人の卵巣は特有な周期変化をしている。…

【胎児胎盤機能検査】より

…したがってユニットとしての胎児と胎盤の機能を調べる胎児胎盤機能検査法のほうが臨床的には望ましいこととなる。 胎児胎盤機能検査には血清hPL(ヒト胎盤性プロラクチン)値などいくつかの検査法があるが,現在,臨床医によって最もよく用いられているのは母体の尿中エストロゲンを測定する方法である。母体尿中のエストロゲンを測定するのは次のような理論的根拠による。…

【腟自浄作用】より

…しかし成熟婦人では,これらの菌やトリコモナス原虫あるいはカンジダなどの真菌が異常に増加して腟炎を起こすことは比較的まれである。この理由の一つは,成熟婦人の腟は卵巣から分泌されるエストロゲンの作用で上皮が厚くなり,感染に対する抵抗性が強いためである。もう一つの理由は,やはりエストロゲンの作用により腟の上皮中に増加するグリコーゲンをデーデルライン乳酸杆菌が乳酸に変えるため,腟内が酸性に保たれ,その他の菌が増殖しにくいためである。…

【乳房】より

…女性の乳房も子どものときは男性のそれとほとんど変わらないが,後しだいに発育し,ことに思春期に入ると急に膨らみを増す。これは下垂体前葉の性腺刺激ホルモンの分泌が増加し,それによって卵巣が活動しはじめて,エストロゲンestrogen(女性ホルモンの一つ)を盛んに分泌するためである。妊娠すると胎盤から分泌される多量の女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の作用で乳腺はさらに発育し乳房が大きくなり,乳輪の色素が増加する。…

【妊娠】より

…また卵管内における初期妊卵の発育には卵管分泌物が重要な役割を演じていることがわかってきている。卵管での輸送や卵管の分泌はエストロゲンやプロゲステロンによって影響される。こうして,受精卵はほぼ3~4日で,64~128細胞からなる初期胚胞または32~64細胞からなる後期桑実胚期に子宮腔に達する。…

【ピル】より

…経口避妊薬oral contraceptiveともいう。女性ホルモンの卵胞ホルモン(エストロゲン),黄体ホルモン(プロゲステロン)と同じ薬理作用を有する2種類の合成ステロイドホルモンを含んだ錠剤。これを飲んで避妊に用いる。…

【卵巣】より

…すなわち,ステロイドホルモン分泌細胞の形態をとる。この細胞から女性ホルモンであるエストロゲンが分泌されるが,これは子宮内膜を増殖させるほか,二次性徴をもたらす。なお二次卵胞はさらに成熟を続け,グラーフ卵胞(グラーフ濾胞,成熟卵胞)となる。…

※「エストロゲン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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