…これが1950年代後半に入って世界の先進工業国が戦災の復興を成し遂げ,重化学工業を基幹とする飛躍的な経済の拡大発展とハイペースな技術革新との時代を迎えると,それまでの伝統的港湾形態は大きく変貌を遂げることとなった。まず,目覚ましい経済発展により経営規模を拡大し,大量の輸入原料や燃料資源を必要とするようになった第2次産業資本は,輸入資源の海上輸送費用の節減と安定を図るために,自己の生産部門の一部として合理的かつ近代的な自家専門埠頭の建設を推し進めたことにより,臨海工業地帯において埠頭の専門化および専用化と港湾の大規模化が急速に進んだ。そして埠頭の専門化,専用化と港湾の大規模化は,バルク・カーゴ(ばら積貨物)分野にとどまらず,やがて60年代後半のコンテナー化によってゼネラル・カーゴ(個品雑貨)分野にも波及し,定期船港湾でも埠頭ターミナルの専門化と専用化をもたらし,港湾規模を著しく拡大させた。…
…これは図に示すように,ナフサ分解工場(エチレン・センターと呼ばれる)を中心に,そこからでてくる各留分を原料とする有機合成工場,そこへナフサを送りこむ石油精製工場がそれぞれ隣接して立地し,各工場間はパイプで連結され,それぞれの工場の製品は次の工場へ原料としてパイプで送りながら,文字どおり結合生産を行うのである。こうした石油化学コンビナートを,海岸部を埋め立てて造成した,人工港湾つき工業用地に結びつけ,臨海工業地帯をつくりだしていくということが,高度成長期の日本の工業建設の軸であった。58年に三井石油化学をエチレン・センターとしてスタートした岩国・大竹コンビナートが,臨海コンビナートとして注目をあびた最初の例である。…
※「臨海工業地帯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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