各種産業のなかで工業(製造業)の生産額・出荷額・投下資本・雇用労働力などが卓越し、土地利用の面で多数の工場やその関連施設が立地し集積して、しかも、とくに地域的に連続し集中して、その密度の高い区域をいう。
一般に工業地帯は、(1)一つまたは若干の中核的役割を果たす基幹業種(製鉄など)の大工場と、それに関連する二次・三次加工の工場、同様に中心的な加工組立型製造業種(自動車・電機など)の大工場と関連の部品工場・素材工場などが一定の区域に空間的関連性をもって立地する場合、(2)特産品工業として、類似か同業種の中小企業の工場が多数集団的に立地する場合、がある。また両者が併存して形成されていることもある。
業種が多岐にわたるのが総合工業地帯である。総合工業地帯ほど業種が多くない場合は複合工業地帯といわれる。工業地帯の代表的製造業種名を付して繊維工業地帯、化学工業地帯などのように区分することがあり、また臨海工業地帯、内陸工業地帯のような位置による分け方もする。
工業立地の集積が過度になり、企業にとって、かえって生産費がかさんだり、公害発生などによって法規制が強化されたりして、不利な条件が増大すれば、離れた地域に立地移動する工場が数多く出現し、工業地帯が衰退化することもある。一方で、工場が外縁部に拡大することで、より広い工業地帯を形成することもある。
日本の場合、四大工業地帯とよばれた京浜、阪神、中京、北九州や、瀬戸内、駿河(するが)湾沿岸などの工業地帯は第二次世界大戦以前から形成されており、それらは連担しているともいえる。京浜と京葉をあわせて京浜葉工業地帯とよぶ場合もあり、範囲の決め方は多様である。工業地帯を細分化して、「工業地区」industrial districtと称する場合もある。工業地帯は、工業が盛んな地域(工業地域)のなかでも集積の度合いや区域の広さなどがとくに大きいものをよぶが、両者を区別せず、同義的に用いられることも少なくない。
世界の代表的工業地帯は、まず動力源に石炭を使用した19世紀には、おもな炭田地帯に成立し、ついで政治・経済活動の活発な大都市地域に成立をみた。20世紀になってからは、原燃料としての電源地帯、次には商品輸送の結節点になる大商港や鉄道網の中心に形成され、原燃料の海外依存度や貿易量が高まると、臨海部に確立し工業港群を出現させた。ロシアや中国などでは地下資源と結び付いたコンビナートが中心であったが、近年、とくに中国では改革開放政策を契機にした臨海工業地帯の発展が著しい。また20世紀末からは新興国・産油国でも工業地帯が形成されつつある。
[柾 幸雄・加藤幸治]
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…工業が他の産業に比べて生産額,投下資本,雇用労働力などの面で高い割合を占め,土地利用の面でも工場,またはその関連施設が卓越している地域。工業地域のうち,とくに規模の大きなもの,あるいは帯状のものを工業地帯とよぶこともある。工業地域の範囲は工場の集積の状態,工業人口比率,工場間の地域的結合関係などを指標にして決定される。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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