自殺論(読み)じさつろん(英語表記)Le suicide: étude de sociologie

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「自殺論」の意味・わかりやすい解説

自殺論
じさつろん
Le suicide: étude de sociologie

フランスの社会学者 É.デュルケム著書。 1897年刊。自殺の問題を初めて社会学的に解明したもので,ここでは個人的,心理的事実に還元できない,自殺の社会的事実の存在が主として統計的手法によって証明されている。巨視的に眺めた場合,自殺の原因従来いわれてきたように個人的なものでも人種的,自然環境的なものでもない。それはなによりも社会的なものに求められる。ここで彼は,社会からの疎外による「自己本位的自殺」,破綻的な社会変化に基づく「アノミー的自殺」,社会統合の大なることによる「集団本位的自殺」を区別した。この自殺論は,その後 A.ベイエ,C.A.A.ブロンデル,M.アルバクスらが発展させた。

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世界大百科事典(旧版)内の自殺論の言及

【アノミー】より

…フランスの社会学者デュルケームによって用いられるようになった社会学上の概念。語源的には,〈無法律状態〉などを意味するギリシア語のanomosに由来するといわれるが,デュルケームが《社会分業論》(1893)および《自殺論》(1897)でこの概念を用いて以来注目され,今世紀の社会学者によって社会解体,価値の不統合,疎外などさまざまな現象を分析し記述する際にさかんに用いられるようになった。デュルケームによれば,社会の分業が正常にすすめば,社会の諸機能の相互依存がつよまり,有機的な連帯が生まれると考えられるが,現実の近代西欧社会では無規制的な産業化のために諸機能の不統合が生じ,連帯よりも弱肉強食の対立,抗争がむしろ支配的となっている。…

【自殺】より


[自殺の社会学的側面]
 自殺の社会的要因を研究したのは,フランスの社会学者É.デュルケームである。デュルケームは《自殺論Le suicide:étude de sociologie》(1897)で,社会現象としての自殺(率)の動向を,個人の病態心理的要因や人種,遺伝,気候などの生物学的要因では説明しきれないとし,社会的構造の特性との関連で考えた。すなわち,彼は近代社会に特徴的な自殺のタイプとして,(1)愛他的自殺suicide altruiste,(2)利己的自殺suicide egoïste,(3)アノミー的自殺suicide anomique,(4)宿命的自殺suicide fatalisteの四つに分類した。…

※「自殺論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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