蝦夷地図式(読み)えぞちずしき

日本歴史地名大系 「蝦夷地図式」の解説

蝦夷地図式
えぞちずしき

二舖(乾・坤) 九〇×七五センチ・四五×七五センチ 写図彩色 近藤重蔵 享和二年・寛政一二年 市立函館図書館蔵

解説 乾坤の二図よりなる蝦夷地図で、「乾」は蝦夷島、ウルップ島以南の千島諸島、カラフト島を、また「坤」はレブンチリポイ島以北の北千島諸島とカムチャツカ南端地方を描いている。享和二年の識語をもつ「乾」の蝦夷島は今日の地図を思わせる見事な出来栄えであるが、カラフト島は前年の高橋次太夫・中村小市郎調査のカラフト見分図を直ちに借用しており、アムール河口地方との関係は分離図の上に接続図を張付けた二様の図で示しているところもそっくりである。南千島諸島についてはエトロフ島が大きすぎる難があるが、各島の沿岸にはびっしりとアイヌ語地名が記されている。寛政一二年に作製された「坤」の北千島諸島図は実測図ではなく、日本側に帰化したラショワ島アイヌのイチャンゲムシ(日本名市助)が記憶によって描いた詳細な概念図である。各島の地名や入江などのほか、島々間の航路方位や距離まで入念に記した驚くべき地図で、安政二年に水戸藩の酒井喜熙が作製した皇国総海岸図のなかにも利用されている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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