方位(読み)ほうい

精選版 日本国語大辞典 「方位」の意味・読み・例文・類語

ほう‐い ハウヰ【方位】

〘名〙
① ある方向一定基準方向に対してどのような関係にあるかを示すことば。東西南北を基準として、一六または三二方向に区分する。十二支によれば北から東まわりに子(ね)・丑(うし)・寅(とら)と一二等分し、また易(えき)では北から東まわりに、坎(かん)・艮(ごん)・震(しん)・巽(そん)・離(り)・坤(こん)・兌(だ)・乾(けん)と八等分する。方角
史記抄(1477)一八「已に伏羲八卦の方位が定て」 〔張衡‐東京賦〕
② 各方向に陰陽、五行、干支、易の八卦などを配し、その方向に向かっての吉凶を判断する術。吉方(えほう)金神(こんじん)鬼門(きもん)の類。
※人情本・春色梅児誉美(1832‐33)初「そも八将神の方位にそむかず建とは」
③ 向いたり、進んだりする方。方向。
※改正増補物理階梯(1876)〈片山淳吉〉一「此力亦其方位に従ひ以て其名を異にす」

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デジタル大辞泉 「方位」の意味・読み・例文・類語

ほう‐い〔ハウヰ〕【方位】

ある方向が、基準の方向に対してどのようであるかの関係を表したもの。通常は子午線の方向を、これに直角に交わる方向に西を定めた4方位を基準とし、その中間北東北西南東南西として加え8方位に、さらにその中間に北北東・南南西などをとり16方位に、さらに細分して32方位にして示す。古くは12の方向に分けて十二支を配し、北を、北東を丑寅うしとらなどとよんだ。天文学測地学では、方位角を用いて表す。
各方角に陰陽五行ごぎょう十二支八卦はっけなどを配し、それぞれに吉凶があるとする民間信仰恵方えほう金神こんじん鬼門などの俗信を生んだ。「方位を見る」
[類語]方向方角向き

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「方位」の意味・わかりやすい解説

方位
ほうい

方角と同義であるが、とくに人事の吉凶との関係において考えられるもの。東西南北の四方位が四正(しせい)、その中間の東北、東南、西南、西北が四隅(しぐう)で、あわせて八方位となる。方位はさらに12に分けられ、古代中国ではこれに十二支を配当した。また、八方位は3分して二十四方位ともする。これら各方位にはそれぞれ特別の意義が付与されていて、人間の運命に影響を及ぼすものとするが、古代中国のこの考えは日本にも早く伝えられ、陰陽師(おんみょうじ)などによって広められて、旅行、移転、新築その他いろいろの場合に方位の吉凶をみることが行われて現代に至っている。方位の吉凶は、(1)「丑寅(うしとら)(東北)の鬼門(きもん)」のように固定しているものと、(2)年、月、日、時刻などによって変わるものとの二通りがある。

 (1)の丑寅の鬼門は今日でも重視されるが、その理由については諸説がある。あるいは東北が死霊、すなわち鬼の出入りする門という説に由来するものとし、あるいは、空間としての丑寅を時間の丑寅に置き換え、旧12月の丑月(うしのつき)と旧正月の寅月(とらのつき)をともに年の境、丑刻・寅刻を昨日から今日の1日の境とし、この丑寅を変化宮とみての畏怖(いふ)による、とするが、このほかにも異説がある。

 (2)は、一定の法則によって循環する凶神・吉神の在泊方位につれて、その吉凶が変わるもので、その凶災には金神(こんじん)、八将神(はっしょうじん)などによる「神殺(しんさつ)」と、方位による「方殺(ほうさつ)」とがある。金神の作用は強く、その在泊方位に向かって土木作業、出行、移転などを忌む。八将神は陰陽道における午頭天王(ごずてんのう)の八王子で、四季と四つの土用の行疫神。一定周期により循環するこの八神の在泊方位は禁方となる。これらの神殺に対し、方殺では、五黄殺(ごおうさつ)、暗劔殺(あんけんさつ)、本命殺(ほんめいさつ)、本命的殺(ほんめいてきさつ)、歳破(さいは)が五大方殺とされ、これらの方位はすべて凶である。

 吉神は歳徳(としとく)、太歳(たいさい)、天徳(てんとく)、月徳(げっとく)、天徳合(てんとくごう)、月徳合(げっとくごう)などで、その在泊方位を用いる人々に対し幸慶を与えるとし、「恵方詣(えほうまい)り」で知られる恵方とは、その年の歳徳神の在泊方位をさすものである。

[吉野裕子]

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百科事典マイペディア 「方位」の意味・わかりやすい解説

方位【ほうい】

(1)観測点から見た地平面上の方向。子午線と地平線との交点の方向が北と南,これから90°離れた方向が東と西で,東西南北の間をおのおの4または8等分して16方位,32方位がきめられる。日本・中国では真北を子(ね)とし,北東南西の順に30°ずつ12に区分して十二支(干支)で呼んだ。(2)運勢判断の一種で,人の吉凶を方角との関連で判断するもの。中国では五行説や易の八卦(はっけ)や十二支の思想に基づき,四方と中央,八方,十二方,二十四方などの方角に分け,特定の方角を吉または凶とする観念が古くからあった。六朝には方角を固定せず,各神が規則正しく循環すると考えられた八将神があり,年月日時によって吉または凶の方角が変化した。日本でも平安時代の陰陽家によって移入されてから,方角の相生(そうしょう)・相剋(そうこく)が説かれ,さらに六甲空支法と混交して,鬼門,地戸,天門,人門が年によって子丑(ねうし)・辰巳(たつみ)・午未(うまひつじ)・戌亥(いぬい)と循環するとされた。また八将神と金神(こんじん),歳徳神(としとくじん)などの信仰も起こり,丑を凶方とし,月徳・天徳とともに歳徳神のある方向を恵方(えほう)とする俗信も生まれた。
→関連項目家相

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「方位」の意味・わかりやすい解説

方位
ほうい

地表上において,基準とした方向に対して,ある方向がどう向くかを示すこと。通常,基準として子午線の方向を北・南とし,これに垂直に東・西を定め (4方位) ,中間に北東,南東,南西,北西をとる (8方位) 。地上風向の観測に用いられる 16方位は,8方位の中間にさらに,北北東,東北東,東南東,南南東,南南西,西南西,西北西,北北西の8方位を加えたもの。古くは,五行による中央 (土〈黄〉) と四方 (水〈黒〉=北,木〈青〉=東,火〈赤〉=南,金〈白〉=西) ,易による八方または八卦方位 (坎〈かん。北〉,艮〈ごん。北東〉,震〈しん。東〉,巽〈そん。南東〉,離〈り。南〉,坤〈こん。南西〉,兌〈だ。西〉,乾〈けん。北西〉) ,十二支による十二方,八卦と十干との一部を加えた二十四方など,多くの分け方があり,それらに人事の吉凶を関連させた迷信もあった。磁石によって南北を知ることは漢代の中国で始った。古代の日本でも,地面に立てた垂直な棒の影が同長になる点を知って正確な南北を決める方位決定法が行われていた。

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世界大百科事典 第2版 「方位」の意味・わかりやすい解説

ほうい【方位】

ある基準に基づいて,一定の方向またはその方向から測った他の方向を示す語を方位という。 現在,日常用いられる地図のほとんどは,北が上となっており,そうでない場合には,北を表示する磁石の針を表した記号で地図の方位が示されている。これは羅針盤が発明されて航海に用いられるようになり,地図の方位も磁針の指す方向と一致して北が上に置かれるようになって以来一般化したと考えられている。それ以前には地図の方位基準は一定でなく,その時代の世界観を表し,たとえば東方の地上楽園を地図のいちばん上に置いた中世ヨーロッパの地図や,南が上になっているイスラム世界の地図などがみられる。

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普及版 字通 「方位」の読み・字形・画数・意味

【方位】ほうい

方角と位置。

字通「方」の項目を見る

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世界大百科事典内の方位の言及

【空間】より

…ただし,動物での個体空間を抽出することはむずかしく,人間の場合は言語をもちいてはじめて明らかになったにすぎない。【吉田 集而】
[方位における空間認識]
 人は自分の住んでいる自然にもとづいて空間意識をもつ。地球が丸いということがわかり,地球が自転しつつ太陽の周囲を公転するという認識がもてた現在でも,太陽は東からのぼり,西に沈むという意識を人々はまだ用いている。…

【数】より

…前者は対概念を二つ組み合わせて4要素とし,この四つの要素によって世界が成立しているとみる世界観である。典型的なものは4方位に関係づけられた世界観である。一方,八分観はきわめてまれなものであるが,原理的には四分観の4要素がさらに二分された8要素からなると考える世界観である。…

※「方位」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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