改訂新版 世界大百科事典 「血縁係数」の意味・わかりやすい解説
血縁係数 (けつえんけいすう)
coefficient of relationship
共通の祖先をもつ2個体の間の血縁関係の強さを示す係数で,ライトS.Wrightにより導入されたもの(1922)。個体Iと個体Jの間の血縁係数は,遺伝子の作用が相加的(優性関係,相互作用がない)であると仮定したときの遺伝子型値間の相関係数であり,次式で与えられる。ここにFI,FJはそれぞれI,Jの近交係数であり,FIJはIとJの間の近縁係数である。近縁係数coefficient of parentageも個体が遺伝的にどれほど似ているかを示す係数で,ある遺伝子座でIから1個,Jから1個の遺伝子を取り出したとき,それらが共通の祖先遺伝子から由来する確率を示すもので,次式で計算される。ここにAiはIとJのi番目の共通祖先で,Iからmi世代前,Jからni世代前の個体であり,はAiの近交係数である。近縁係数がFIJである両親から生まれる子どもの近交係数はやはりFIJである。
血縁係数は,親子の間,両親が共通の全兄弟間では0.5,祖父母と孫の間,片親を共有する半兄弟間,おじ・めい間では0.25,いとこ間では0.125という係数になる。血縁関係にある個体Iと個体Jの近交係数がともに0であれば,血縁係数は近縁係数のちょうど2倍となる。
執筆者:正田 陽一+大西 近江
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報