近親交配がおこると,その結果生じる個体は同型接合(ホモ接合)になる確率が増加する。その程度を表すための係数。ある個体においてある遺伝子座上の二つの遺伝子(相同遺伝子)が共通の祖先遺伝から由来する確率と定義される。最初ライトS.Wrightにより径路係数法を用いて結合する配偶子間の遺伝的相関と定義(1921)されたが,一般に理解しがたく,現在では上述のマレコーG.Malécotの定義(1948)が広く用いられており,Fまたはfの記号で示される。たとえば,いとこ結婚の結果生まれた子どもではF=1/16,またいとこ結婚では1/64である。
2個の対立遺伝子A1,A2がそれぞれP,(1-P)の頻度で存在する集団で任意交配がおこなわれていれば遺伝子型A1A1,A1A2,A2A2の頻度はそれぞれP2,2P(1-P),(1-P)2であるが,近交係数Fの近親交配をしているとP2+P(1-P)F,2P(1-P)(1-F),(1-P)2+P(1-P)Fとなる。例えばヒトの劣性遺伝子(A1)による遺伝病小頭症のPは約0.005であり,したがっていとこ結婚で小頭症の子どもが生まれてくる(遺伝子型がA1A1になる)確率は,そうでないときの確率0.000025に比べてP×(1-P)×F=0.005×0.995×1/16=0.000311だけ増えて,0.000336と約13倍になる。
執筆者:大西 近江
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…法制上禁婚範囲の緩和がどこまで進むかは,人類史以来とされる結婚禁忌感情と近代法思想による婚姻自由,配偶者選択自由の原則との相克いかんにかかわるのではなかろうか。近親相姦【加藤 美穂子】
[医学からみた近親結婚]
血縁の近い男女間の結婚(近親結婚)では,それによって生まれる子供に,共通の祖先由来の遺伝子がホモ接合となって(同一の遺伝子が2個そろうことをホモ接合といい,ホモ接合になりやすさを近交係数と呼ぶ),病的形質が発現しうることが医学的には最も問題になる。すなわち近親結婚では常染色体性劣性遺伝病患者の増加がみられ,例えば,ある試算によるとフェニルケトン尿症はいとこ婚では他人結婚の約9倍,黒内障性痴呆は約36倍の頻度になる。…
…個体Iと個体Jの間の血縁係数は,遺伝子の作用が相加的(優性関係,相互作用がない)であると仮定したときの遺伝子型値間の相関係数であり,次式で与えられる。ここにFI,FJはそれぞれI,Jの近交係数であり,FIJはIとJの間の近縁係数である。近縁係数coefficient of parentageも個体が遺伝的にどれほど似ているかを示す係数で,ある遺伝子座でIから1個,Jから1個の遺伝子を取り出したとき,それらが共通の祖先遺伝子から由来する確率を示すもので,次式で計算される。…
※「近交係数」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新