化学辞典 第2版 「複素コンプライアンス」の解説
複素コンプライアンス
フクソコンプライアンス
complex compliance
線形粘弾性において,振動的な応力σ,ひずみγに対するコンプライアンスを複素表示したものを複素コンプライアンスといい,複素弾性率の逆数に当たる.すなわち,応力
σ* = σ0eiωt
に対するひずみ
γ* = γ0ei(ωt-δ)
の比
J * = γ*/σ*
をいう(ωは周波数,i 2 = -1,δは位相差角).J * を
J * = J ′ - iJ ″
と書いたとき,J ′を貯蔵コンプライアンス,J ″を損失コンプライアンスといい,その比J ″/J ′は損失正接tan δに等しい.
J ′,J ″,tan δ
は,一般に周波数に依存する.フックの弾性体では
J ″ = 0,tan δ = 0,
ニュートン粘性体では
J ′ = 0,tan δ = ∞
である.複素弾性率
G * = G ′ + iG ″
と J * は
G *J * = 1
の関係にあるので,
が成り立つ.複素コンプライアンスは複素弾性率と同様,線形粘弾性における重要な特性関数の一つである.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報