日本歴史地名大系 「要害絵図」の解説
要害絵図
ようがいえず
解説 要害制度・地方知行制の様相を知るうえで格好の絵図。作製年代・形式など多様にわたるが、おもに次の三種類があげられる。いずれも原本。(一)主として貞享四―五年に作製され仙台藩に提出されたもの。宮城県図書館蔵。(二)要害屋敷絵図と称するもの。宮城県図書館蔵。(三)仙台市博物館蔵のもので、藩政期では最古のものといわれる。(一)は要害制が貞享四年には名実ともに成立したことを示すといわれ、拝領者の居所のほか家中屋敷・足軽屋敷・町屋・寺屋敷・田畑・山林・街道・川などが描かれる。現宮城県関係の分は次のとおり。刈田郡平沢要害屋敷惣絵図、栗原郡佐沼要害屋敷惣絵図、栗原郡高清水要害屋敷惣絵図、栗原郡宮沢村居館之絵図、柴田郡前川村川崎要害屋敷惣絵図、玉造郡岩出山要害屋敷惣絵図、遠田郡涌谷館并館下絵図、登米郡登米要害屋敷惣絵図、名取郡岩沼郷館并館下絵図、亘理郡坂本要害屋敷惣絵図。このほか藩に提出したものではないが、その下絵あるいは写本と思われるものは次のとおり(ただし前出の要害は省略)。伊具郡角田要害屋敷并館下絵図、伊具郡金山要害屋敷并館下絵図、柴田郡舟岡要害屋敷惣絵図、遠田郡不動堂要害屋敷并館下絵図、亘理郡亘理要害屋敷并館下絵図。(二)は拝領者の居所付近を主として描いたもので、現宮城県域のものは次のとおり。伊具郡角田要害屋敷絵図、伊具郡金山要害屋敷絵図、刈田郡平沢要害屋敷絵図、栗原郡佐沼要害屋敷絵図、栗原郡高清水要害屋敷絵図、栗原郡宮沢要害屋敷絵図、柴田郡川崎要害屋敷絵図、柴田郡舟岡要害屋敷絵図、玉造郡岩出山要害屋敷絵図、遠田郡不動堂要害屋敷絵図、遠田郡涌谷要害屋敷絵図、登米郡登米要害屋敷絵図、名取郡岩沼要害屋敷絵図、亘理郡坂元要害屋敷絵図、亘理郡亘理要害屋敷絵図。(三)は寛永―延宝頃の間に成立したと推定されている。居所を城または山城と記していることなどから、この頃は要害を城とよんでいたと推定する根拠の一つとなっている。ほかの記載内容は(一)と同様である。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報