化学辞典 第2版 「誘導ラマン効果」の解説
誘導ラマン効果
ユウドウラマンコウカ
induced (stimulated) Raman effect
ラマン効果が共存するラマン光による誘導放射として起こる現象.ジャイアントパルスレーザー光のように,いちじるしく強いコヒーレントな励起光を用いたとき顕著に現れる.散乱光は入射光 ν0 に対して
(ν0 ± nνm)
の振動数をもち,すべてコヒーレント光で,それぞれの波長に応じて入射光方向と一定の小さな角度をなす方向に指向性をもって放出される.nは正の整数であり,n > 1に対応するラマン線は基本振動 νm の倍音ではなくて,厳密に νm の整数倍に等しいラマンシフトを与える.これは誘導ラマン効果の強度がいちじるしく大きいために,生じたラマン線が励起線となって,nより1だけ大きい別のラマン線を生じるためである.νm としては,通常のラマン効果において,単位線幅当たりの強度が最大であるようなラマン線だけが一般に現れる.通常のラマン効果と異なり散乱強度がいちじるしく大きいので,ラマンレーザーに利用される.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報