日本大百科全書(ニッポニカ) 「識字教育」の意味・わかりやすい解説
識字教育
しきじきょういく
字の読めない人を対象に読み書き能力を身につけさせる教育のこと。また、こうした目的で行われる国民的な教育運動を識字運動という。
読めない・書けない人をなくそうとする国民的な運動としては、革命後のソ連や1920年代からの中国の識字運動などが有名であり、大きな成果をあげてきた。アジア、アフリカなどの開発途上国でも、最重要課題の一つとされ、各国とも50年代からこの問題に取り組んできており、この面での国際協力が積極的に行われている。とりわけユネスコでは、各国と協力して、文字が読めない・書けない人をなくし経済・社会開発を促進するために、機能的識字教育functional literacy educationという考え方を打ち出している。このねらいは、従来の読み書き計算の能力を付与するだけでなく、識字教育と職業訓練を結合して、彼らを社会生活に適合させることにあり、識字教育を経済・社会開発計画の一環として位置づけるものとなっている。国際連合は1990年を「国際識字年」とし、ユネスコなどを中心に、2000年までの行動計画を策定、識字教育を進めたが、思うように効果があがっていない現状である。
[石井 均]