一国、あるいは、あるまとまった地域における識字者の割合。国連教育科学文化機関(ユネスコ)では、「総成人人口(15歳以上)に対する推定成人識字者の割合を百分率で表したもの」としている。識字者の定義は国や専門家によって異なり、自分の名前が書ける程度、簡単な文章が読み書きできる程度、日常生活に必要な読み書き計算ができる程度などさまざまである。ユネスコでは、「日常生活で用いられる簡単で短い文章を理解して読み書きできる15歳以上の成人」としている。かつては、「文盲率illiteracy rate」として読み書きのできない人の割合を調査・公表してきたが、その後「非識字率」と名称を改め、さらに読み書きのできる人の割合を示す識字率によるデータの収集・統計に改められた。
読み書きの能力が低いことは、自給自足的な伝統的社会では大きな問題とはならないが、科学・技術が発達し、生活様式が大きく変化してきた今日においては深刻な問題となる。日本の場合には、1948年(昭和23)の読み書き能力調査によれば、15~64歳の人口のうち、まったくできない者は1.7%とされ、世界でもっとも識字率の高い国の一つとされた。2000年(平成12)現在、日本では就学率をもって識字率としており(15歳以上)、読み書き能力に関する調査は行っていない。
アジア、アフリカなどの開発途上国では、非識字者の存在が経済、社会の発展に大きな障害となっている。識字者の基準があいまいなため、世界の正確な識字率はつかめないが、ユネスコの資料によれば、1960年には、15歳以上の人口のうち、識字者はアジアに約4億4000万人(識字率約45%)、アフリカに約3000万人(約20%)、世界全体で約11億1000万人(約60%)、70年には、アジアに約6億5400万人(53%)、アフリカに約5300万人(26%)、世界全体で約15億1000万人(66%)。1995年の統計は地域が細分化され、前の数値と単純比較はできないが、識字者(15歳以上)はアジア・太平洋地域約14億8100万人(71%)〔アジア・太平洋地域の内訳、東アジア・オセアニア10億6400万人(83%)、南アジア4億1700万人(51%)〕、アラブ諸国8400万人(56%)、サハラ以南のアフリカ地域1億7100万人(55%)、ラテンアメリカ・カリブ地域2億7600万人(87%)、先進諸国9億2900万人(99%)、世界全体で29億4100万人(77%)となっている。このように、世界の総人口に占める識字者の比率は増加しているものの、非識字者の実数は人口増加と相まって、今日でも依然として増大し続けていることが予測されている。
国際機関を中心とする国際協力によって非識字者をなくす努力が続けられているが、とりわけユネスコは、1965年にはイランのテヘランで、「世界文部大臣会議」を開催するなど、多くの協力事業を行ってきている。また、とくにアジア、アフリカなどの人口増加の激しい開発途上国では、それぞれ学校教育だけに限らず、成人教育の領域でも識字教育運動を展開している。国際連合は1990年を「国際識字年」とし、「2000年までにすべての人々に文字を」というスローガンのもと識字教育の充実を図っているが、目標の達成は困難である。
[石井 均]
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