貝包丁(読み)かいぼうちょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「貝包丁」の意味・わかりやすい解説

貝包丁
かいぼうちょう

穀物の穂を摘み取る貝製の道具。同目的の石器を石包丁とよぶことに倣ってこの名があり、指かけ用の紐(ひも)を通す孔(あな)を1~2あけたもの、孔をもたぬものがある点も石包丁と共通する。中国考古学では蚌刀(ぼうとう)とよび、淡水産の二枚貝製のものが新石器時代の竜山文化にあり、この形に倣って杏仁(きょうにん)形・半月形の石包丁が生まれたともいわれる。日本では弥生(やよい)時代前期に九州に実例があり、また後期に神奈川県三浦半島の洞穴遺跡に豊富である。ともにアワビ製。現代のイネ摘み用の貝包丁は、フィリピンスラウェシセレベス)島などで知られる。日本ではアワ摘み用として、長崎県福江島のアワビ製品、北海道でアイヌが使ったカワシンジュガイ製品が知られる。

[佐原 真]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の貝包丁の言及

【石庖丁】より

…仰韶文化には土器片を利用したものがあり,竜山文化では貝殻を使っている。日本でも神奈川県毘沙門洞穴遺跡などで貝庖丁が出土している。また大阪府鬼虎川(きとらがわ)遺跡などには鋭利な木製品がある。…

※「貝包丁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android