改訂新版 世界大百科事典 「貞享書上」の意味・わかりやすい解説
貞享書上 (じょうきょうかきあげ)
江戸中期,幕府が諸家に書き上げさせた系譜。貞享書付,貞享諸家書付,諸家書付,書付ともいう。40余袋が長持2棹にあり,《元治増補御書籍目録御家部》には146巻5通3帖115冊とあるが現存しない。1873年の皇居炎上に焼失したと思われる。この書上は《三河記》の改定増補,すなわち《武徳大成記》の史料として1683年(天和3)に大名・旗本をはじめ,浪人・御用達等の諸家(当然のちの絶家を含む)に命じて,主として翌84年(貞享1)に録上せしめた諸家の系譜で,紅葉山文庫に一括保存し,風干し,袋詰め,整理もされていた(《幕府書物方日記》)。この書上の書式形態は,原史料のゆえでもあろう,家伝を中心としたもの,系図を主体としたもの,家蔵の古文書中心のものなど,表記も漢文,ひらかな,かたかな交りなどまちまちであった。焼失したこの書上は幸いにも《寛政重修諸家譜》の編纂史料の一つとして転写整理され,《譜牒余録》として現存し,ほかには《朝野旧聞裒藁》に引用抄出されている。
執筆者:加藤 秀幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報