賃金ドリフト(読み)ちんぎんドリフト(その他表記)wage drift

改訂新版 世界大百科事典 「賃金ドリフト」の意味・わかりやすい解説

賃金ドリフト (ちんぎんドリフト)
wage drift

労使の団体交渉によって締結される賃金協約が,多数の企業を対象とする業種別または産業別協約である場合,ある特定企業が賃金協約の規定を上回る賃金を支給すると,実際の賃金率と協定賃金率にずれが生ずる。こうした現象を賃金ドリフトという。〈ドリフトdrift〉とは,ある特定企業の独自の支給分のことである。賃金ドリフトは,イギリス西ドイツなどの全国的ないしは地域ごとの産業別賃金協約が支配的である西欧諸国において,1960年代から70年代前半にかけて発生した。この時期は,労働市場に需要超過がみられ,企業は労働力を確保するために,種々の工夫をこらして協約賃金率を上回る賃金率で労働者を雇用せざるをえなかった。そのために賃金ドリフトが発生したのである。賃金ドリフトが注目された理由は,所得政策の効果を減殺することにあった。コスト・インフレインフレーション)を防止するための所得政策は,労使の賃金交渉を生産性上昇率の範囲内に誘導することによって,賃金上昇率をコントロールしようとする政策である。賃金協約をコントロールしえても,賃金ドリフトが発生している場合には,実際の賃金上昇率をコントロールしたことにはならず,所得政策はしり抜けにならざるをえない。アメリカでは,ガイド・ポストという名で所得政策が実施されたが,自動車などの主要産業の賃金協約が企業別協約であったために,賃金ドリフト問題は発生しなかった。日本では,所得政策は行われなかったが,企業別賃金協約が支配的なので,同じく賃金ドリフト問題は起こらなかった。
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