政策(読み)せいさく

精選版 日本国語大辞典 「政策」の意味・読み・例文・類語

せい‐さく【政策】

〘名〙
① 政府、政党、団体または個人が公共的な問題について、とるべき方向や態度。方針。一般には政治的問題に限定して用いられる。
※国会論(1888)〈中江兆民〉「時事を評判し政策を指議し大臣宰相を月旦し国会議士を雌黄するに及びては」
② 目的を遂行するための実行手段。
※灰燼(1911‐12)〈森鴎外〉一三「その心の中にはどうしようかと云ふ政策の問題と、どう言はうかと云ふ辞令の問題とが」

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デジタル大辞泉 「政策」の意味・読み・例文・類語

せい‐さく【政策】

政府・政党などの施政上の方針や方策。「政策を立てる」「外交政策
目的を遂行するための方針・手段。「営業政策
[類語](1ポリシー政治まつりごと行政施政国策国政国事政事政道万機ばんき経世経国経綸けいりん治国治世統治治政為政いせい/(2得策方策対策施策企て一計奇計奇策愚策秘策・対応策・善後策方法妙計妙策良計良策上策下策一策万策拙策無策弥縫策びほうさく密計秘計百計

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改訂新版 世界大百科事典 「政策」の意味・わかりやすい解説

政策 (せいさく)

一定の意図を実現するために用意される行動案もしくは活動方針を広く政策というが,文脈に応じてかなり多義的に用いられる。政府のそれだけに限られず,販売政策,人事政策のように,民間企業においても,またそれ以外の一般組織の内部管理においても,さまざまな用いられ方をする。英語でポリシーpolicyと表現する場合には,いっそうその範囲が広がる。しかし,日本で政策概念がもっとも多用されるのは,政治社会ないし統治機構において織り成される公共政策public policyに関してである。そこには,外交,国防,貿易等の直接国際関係に及ぶ政策分野と,福祉,労働,文教,環境,建設,治安等々,国内に主たる対象を有する政策分野とがあるが,国際問題と国内問題との境界は,一方が他方に波及しあい,相互のつながりが密になるにつれて判然としないものとなる。国際と国内とを問わず,上記のような各種の政策分野相互間においても同様である。政府が対応を迫られるそれぞれの問題は,一面からみれば福祉政策の対象となりうるし,他面からみれば労働政策や経済政策の対象となりうる。いったん分化した政策分野が,政府を取りまく環境や状況の変化に応じて相互に入り組み,各分野間の相互調整にかかる負担の増大にともなって再編成を余儀なくされたりする。

とくに政治社会における政策は,それが公権力をめぐる非対称的な権力関係の脈絡において織り成されることから,きわめて複雑な問題を提起する。それは,社会次元での自動的調整を超える争点ないし紛争に対して,その一応の解決をはかり,政治社会の安定を保持するために,公権力を背景として繰り出される統治手段であり,そのことからすぐれて〈政治的〉な性格を帯びざるをえない。上記のように,政府活動は環境の変化に対応しつつ多岐にわたって繰り広げられるが,組織体一般の環境適応活動と異なって,政治社会の支配-被支配関係に沿って展開される政治力学をともなうために,ことさら錯綜した利害関係をつくり出す。個々の公共政策の目的は,特定の価値実現であり,政府活動をとおして達成され維持されることが望ましいと考えられた広義の利益配分や社会的状態を表現したものであるが,いかなる価値や状態を望ましいと考え,どのような資源をどれだけ用いて,どのような方法で実現するかということの一つ一つが論争の的となりうるし,政策内容に関していったん決着がつけられ実施に移されてからも,考え方の違いによる争いは次々と生じうる。

 特定の政策が用意され,公式の権限と責任を有する公的権威者・機関によって採択される政策形成過程においては,異なった利害関心と政策意図をもつさまざまな個人・集団が,それぞれより多くの支持者を糾合し,立ちふさがる反対者の抵抗を少しでもやわらげようと,機略をつくしてあの手この手を打ちあうことから,ときにマス・メディアのネットワークを伝わって,多くの人々の耳目をひきつけることになる。そこに登場する多様な行為者(アクター)相互間では,競争ないし紛争関係に立つ相手側の同意を取りつけるためにさまざまなスタイルの戦略・戦術が駆使されるが,いわゆる圧力政治もしくは利益政治の体系にあって多用されるのが〈政治的バーゲニング〉である。すなわち,政策意図や政策内容に関して部分的に食違いがある場合に,当事者が譲歩したときと譲歩しなかったときの利害得失をそれぞれ計算し,譲歩したほうが双方にとって〈よりまし〉であれば相互に歩み寄って妥協しあうとか,政策意図にずれがあっても,当事者のそれぞれが相手側の要望を容認し,その要望に対する支持を交換しあうことによって,双方の要望を一括して政策内容に盛り込み,その政策の実現を図る戦略(ログ・ローリングlog rolling)などが,その代表例である。ただしかし,この政策形成過程に登場するアクターの顔ぶれや繰り広げられる相互作用のパターンは,問題となる政策の類型によっても,非政府集団を含む広義の政策決定機構の構成によっても異なったものとなる。国民に対し有形・無形のサービスや財を積極的に提供する政策と,国民生活を保護するために私的活動に対して一定の規制を行う政策とでは,当然様相が異なってくる。両者にまたがって,特定のサービスや財を競合関係にある一部の者にのみ選択的に提供し,対象とする分野の秩序を一定方向に規制する政策もあるし,さらには,特定の集団に対して他の集団の犠牲のもとに価値を付与するような所得移転効果をねらった政策もある。これらのほかに,政策決定機構の構成や公式の決定手続に直接かかわる政治政策もあれば,最近注目されるようになってきた,突発的状況のもとでの危機管理政策などもある。

正当な手続を踏んで政策選択が行われた後の政策実施過程もまた無視しえない。政策が当初意図されたとおりに実施され,期待された効果をもたらすとはかぎらないからである。採択された政策はいくつかの形式をとって公示されるのが常であるが,背景にある政策意図やねらいとする政策目的は,法令の目的条項にみられるように,往々にして不明確にしか規定されておらず,官僚機構を通じての実施過程における裁量的判断にゆだねられる余地が大きいために,その政策を支持した利害関係者の目からしても思いもかけなかったような〈予期せざる結果〉が生み出されたりすることもある。政策にはいくつかのレベルがあり,たとえば硫黄酸化物等の排出規制政策は大気汚染防止政策の一環をなし,その上位政策は,水質汚濁防止政策等とともに公害防止政策を構成し,公害防止政策はさらに包括的な環境保全政策の一環を構成するというぐあいに,一連の目的-手段の連鎖的階層体系をなしていることが多い。しかし,こうした〈目的の階層制〉において想定される連鎖関係の一つ一つが,相互に矛盾することなく組み合わさった形で各政策が実施される保証は必ずしもない。この〈目的の階層制〉に応じて官僚機構の組織編成を整え,異なった政府レベル間での機能分担が図られたりするが,管理組織を通じてのコントロールには限界があるし,ましてや,政策の立案・形成は中央省庁,その実施は地方自治体といった単純な機能分担方式によって,いわゆる〈政策の失敗policy failures〉が防止できるものではない。地方自治体が中央政府からの委任事務を処理する場合にも,広範な政策的判断の余地が残されていることが多く,地域住民と接する自治体の対処のしかたによって,個別政策の具体的効果が大きく左右されたりする。政策形成過程において,だれが,いつ,どのような影響力もしくは権力を行使したかということと並んで,政策実施過程における裁量権の配分構造や最終的な政策効果を規定する諸要因の組合せを問題にしなければならないのである。

ところで,近年,公共的問題に対する政府の効果的対応を求めて,公共政策のあり方に関する学問的・実践的関心が高揚してきており,政策研究が国際的規模で活発化しつつある。従来の政策研究の中心は,合理的な意思決定技法の開発に向けられ,企業経営での新機軸に学んで,ORやシステム分析の公共的問題への適用に一つの焦点があてられてきた。むろん,現実の政治・行政過程には,そうした分析技法の直接的適用をはばむ数多くの要因があるけれども,資源の有限性に関する認識が広まり,その希少資源の最適配分にこれまで以上に努めなければならない今日,政策決定の合理化を志向した従前の政策研究の伝統は,今後いっそう充実したものにしていかなければならないであろう。しかし,最近の政策研究は,合理的な政策デザインや洗練された決定技法の開発のみならず,実施過程を含む広範な政策過程の各位相の分析へと進み,なんのため,だれのための分析かをあらためて問い直す気運のなかで,〈分析のための分析〉を脱却し,一定の価値関心に基づく評価分析へと展開する方向も目だってきている。〈分析から評価へ〉と概括される傾向もその一つの現れであるが,今後は,政策の合理性の意義をもっと広範な視点から再検討しつつ,〈分析も評価も〉あわせてとらえ返す動きが活発化してくるように思われる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「政策」の意味・わかりやすい解説

政策
せいさく
policy

政策とは一般に、個人あるいは集団が、欲求の対象としている財や状態といった特定の価値を獲得し、維持・増大させるために考える行動の案・方針または計画のことをいう。とくに政治社会における政策、つまり公共政策public policyは、社会のレベルでは調整できない争点もしくは紛争に対して統治活動を施すことによって、その解決を図る手段である。政策は一定の目的のための手段の合理化や合理的判断のための技術的な問題として考えられ、その実現目的から切り離して、いかなる価値を、どのような活動と資源を用いて、どんな方法で実現するかという政策内容自体が争点となりうるし、新たな紛争を生むこともありうる。その主体となるのは一般に国家あるいは中央政府であるが、地方政府もまた独自の政策をもちうるし、政党や圧力団体もまた自らの政策綱領をもったり特定の政策を推進したりしている。

[川野秀之]

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普及版 字通 「政策」の読み・字形・画数・意味

【政策】せいさく

政治上の施策。

字通「政」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「政策」の意味・わかりやすい解説

政策
せいさく

公共政策」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の政策の言及

【政治】より

…政治ということばは,さまざまな意味で用いられる。それは今日,国家における政策決定の過程や制度を指して用いられることが多いが,しかし,国家をこえた国際社会での権力闘争(国際政治)や国家内諸集団での意思決定(私的政治)をめぐっても,しばしば用いられてきている。このような広い用例の核にあるのは,集団や社会には一般に,その成員全体を拘束する統一的な決定をつくりだす機能が存在するという認識であり,その機能あるいはそれに付随するさまざまな現象を指して,政治あるいは政治的ということばが用いられてきたということができる。…

※「政策」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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