賞旗制度(読み)しょうきせいど

改訂新版 世界大百科事典 「賞旗制度」の意味・わかりやすい解説

賞旗制度 (しょうきせいど)

資本家の賃労働者に対する身分制支配のもとでの超長時間労働と低賃金という,いわゆる〈原生的労働関係〉のもとでの労働能率刺激策の一つ。日本においては,製糸工場,紡織工場などを中心として明治時代中期以降大正期にかけて盛んに行われた。具体的には,企業内の各工場,各組相互間で競争を行わせ,毎月もしくは毎日の最高生産成績をあげた部署優勝旗を与える。そして次の競技の期間内はその部署に掲げさせておくことにより女工の労働意欲を刺激しようとする方策である。また単に優勝旗のみでなく,ある紡績工場では,組長賞与が与えられ,それをもとに一般女工に化粧品を分配したり,1等の記念の手ぬぐいを作り他の組に誇る習慣もあった。この点からも労働者の競争意識を駆り立てることに成功していたと考えて大過ないであろう。しかしこうした方策は極端な労働強化につながり,女工の肉体的・精神的障害をもたらした。さらに,さまざまな懲罰制度と表裏一体の関係にあったという事実も見逃してはならない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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