アリストテレスの自然学の中心的学説で,自然的物体は2つの本質的原理,すなわち可能的・受動的・無規定的原理としての質料 hylēと,現実的・能動的・規定的原理としての形相 morphēによって構成されていると説く (『自然学』『形而上学』) 。彼は,それが自身他者から生じることなく,ほかのすべての物質の構成要素となるものとしてエンペドクレスの4元素をあげる一方,物質が要素的なものであれ構成的なものであれ,物質が生成し,あるいは実体的変化をとげるために必要な原理として,質料と形相の2原理を要請したのである。アリストテレスの質料形相論は,ギリシアやアラビアのアリストテレスの注釈家やスコラ哲学者によって継承され,特にトマス・アクィナスは彼の『自然学』『形而上学』の注釈や『存在と本質について』 De ente et essentiaで質料形相論への最良の理解を示している。質料,形相という形而上学的原理を主張するこの学説に対立するものとしては,原子論,機械論,力本説などがあり,これらはいずれも形而上学的原理による物体の構成という考えを否定する。