形而上学(読み)ケイジジョウガク(英語表記)metaphysics

翻訳|metaphysics

デジタル大辞泉 「形而上学」の意味・読み・例文・類語

けいじじょう‐がく〔ケイジジヤウ‐〕【形×而上学】

《metaphysics自然学のあとの(〈ギリシャ〉ta meta ta physika)書の意。後世、ロードスアンドロニコスアリストテレスの著作編集に際して採った配列に由来》
アリストテレスでは、あらゆる存在者を存在者たらしめている根拠を探究する学問。すなわち第一哲学または神学
現象的世界を超越した本体的なものや絶対的な存在者を、思弁的思惟や知的直観によって考究しようとする学問。主要な対象は魂・世界・神など。
[類語]哲学思想主義理念信条信念人生観世界観思潮イズムイデオロギー精神

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精選版 日本国語大辞典 「形而上学」の意味・読み・例文・類語

けいじじょう‐がくケイジジャウ‥【形而上学】

  1. 〘 名詞 〙 ( [ラテン語] metaphysica の訳語 ) 事物の本質、存在の根本原理を思惟(しい)や直観によって探究する学問。アリストテレスの著作の一つが、この名で呼ばれたことに始まる。アリストテレスにおいては存在一般を考察する存在論、また、超越的なものを探究する学問であった。カントは純粋理性からの認識論をめざした。ヘーゲルは反弁証法的思考を形而上学的と呼んだ。また、俗に、現実から遊離した抽象的な学問のこと。〔哲学字彙(1881)〕

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「形而上学」の意味・わかりやすい解説

形而上学
けいじじょうがく
metaphysics

基本的な哲学の仮説を批判的に考察し,存在するものはそれが存在するかぎり何であるかを明らかにしようとする哲学の一分野。「自然学書の次の書」を意味するギリシア語 ta meta ta physikaに由来し,形而上学という訳語は,『易経』繋辞伝からとられた。ヘレニズム期にアリストテレスの表題なしの著作を,ロドスのアンドロニコスがそのように呼んだのに始る。形而上学は論理学,認識論,美学,倫理学などの他の哲学的研究とも影響し合い,伝統的に幅広い哲学的な問題に関連してきた。最も基本的な問題は古代ギリシアの哲学者たちが最初に取組んだもので,形相の存在と本質,すなわち心の対象である抽象的な現実という問題である。ギリシア哲学者たちが現実の世界のもの (知覚できるもの) と心の対象 (観念) を区別して以来,形而上学者たちは抽象と物質の関係にたずさわり,両方が存在するのか,あるいはどちらか一方がもう一方より確かに存在するのかを確かめようとした。形而上学者は,自然界,時間と空間の重要性,神の存在と本質を解明しようとしたが,すべて形相と観念の関係を理解しようとする試みだった。
形而上学の主張はおおむね先験的な立場である。先験主義は,基本的で相互に矛盾のない仮説から出発し,それらを論理的な結論まで発展させる。この演繹的なプロセスの間に不合理が起れば,元の仮説を捨てるか,見直さなければならない。形而上学の結論は,その性質上あまりにも一般的でありとあらゆるものを含む主張なので,経験的事実を述べたものというよりは考え方の模範を示したものであり,それを反証を使って論駁するのは効果的な批判とはいえない。そのうえ,新しい知識が古い信念に取って代る経験科学とは異なり,矛盾する無数の形而上学的な理論はすべて時間の試練に耐えており,唯一の形而上学的な真理は存在しないという概念に立脚している。最初の形而上学者であるパルメニデスプラトンは,外観と実体の基本的な違いを認めた。プラトンは,変ることがないゆえに真実である観念の世界を支持して,知覚できる世界における移ろいやすくあてにならない現実を否定した。アリストテレスはプラトンの形相と質料の区別から始めて,生物学モデルを用いてこの2つを統合し,質料は常に潜在的な理想形相に向って動いている,と考えた。このようにして,物質世界は有機的な変化の連続体とみなされる。キリスト教の発展に伴って,哲学者たちは神の実在の先験的論拠を発見することに関心をいだきはじめた。トマス・アクィナスの形而上学に基づくトミズムは,アリストテレスの思想とキリスト教思想を結びつけた。トマスによると,日々の黙想 (アリストテレスによる形相と質料の関係の考察の基礎) は必然的に神の実在の理解につながり,物質世界を支える最も重要な要因である。有限で変転きわまりない物質世界を考察することによって,人はその変化の原因,つまり神に必ず導かれる。
形而上学の思想にもう一つの大きな転換をもたらしたのは,R.デカルトである。デカルトの二元論の哲学は,物質世界と精神世界を別個の独立した領域と定義した。キリスト教哲学者が提唱した神の概念を否定して,物質世界は主因によってつくられるが,その後は巨大な機械のように神の影響とはかかわりなく動く,とデカルトは仮定した。 I.カントは二元論は認めたがデカルトの理論は受入れず,知覚の重要性を示して形而上学に革命を起した。カントによると,物質的現実は時間と空間という人間のつくった構成概念を通じて知覚しなければならない。したがって,物質世界に対する見方は常に知覚のメカニズムによって影響を受ける。カントは初期の形而上学者が物質的現実と考えたものをそのように否定し,すべての観察を観察のメカニズムに従属させた。唯物論観念論は,精神と物質の概念を一つの理論のなかで統合しようと試みた。観念論者は,物質を精神に従属させることによって2つの領域を合流させた。唯物論者は正反対の立場をとり,精神を物質に従属させて,存在するのはすべて物質で精神は物質的な状況に依存すると主張した。
哲学者の一部は,形而上学の方法論と結論の有効性を問題にした。 D.ヒュームはあらゆる知識は知覚を通じて入ってくると主張し,すべての基本概念は知覚の経験から生れるのであって,純粋な思惟など存在しない,と結論づけた。 20世紀の論理実証主義は,すべての主張の意味はそれがどのように証明されるかに依存していると主張し,形而上学的主張には意味がないとの結論を下した。 L.ウィトゲンシュタインの批判によると,形而上学的経験は言語の範囲をこえたもので,物事には語ることのできることと,見せることしかできないことがあり,形而上学的な理論化は言語が明らかにできる範囲外の領域について語ろうとしているためにうまくいかないとしている。

形而上学[アリストテレス]
けいじじょうがく[アリストテレス]
Ta meta ta physika

主として第一哲学 protē philosophia (形而上学 metaphysica) に関するアリストテレスの数個の論文ないし草稿をまとめて前1世紀頃編集されたと推定される書。内容は複雑多岐にわたるが,数学や自然学とは異なった,学や英知そのもの,有そのものを問題とする第1の神的な学問の可能性や必要性を説き,この学の探求を実演的に示すことが主旨であるといえよう。後世形而上学として確立した哲学の原理と素材を提供した重要な文献群である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「形而上学」の意味・わかりやすい解説

形而上学(哲学)
けいじじょうがく
metaphysics 英語
métaphysique フランス語
Metaphysik ドイツ語

世界の究極の根拠を問う哲学の部門。ラテン語のメタフィシカmetaphysicaの訳語。科学はある特殊な領域の存在者を構成する原理を問う。たとえば、経済学は経済事象を成立させている経済法則を問い、物理学は物理事象を成立させている物理法則を問う。特殊性は科学的認識の本質に基づく。科学はある特殊な視野、したがって領域の固定によって、その対象と方法を得るからである。これに対して、いっさいの存在者(世界)の究極の根拠を問う究知があり、これが形而上学である。

 形而上学は領域的、部分的な知識ではなく、普遍的、全体的な知識を求める。これは特殊科学の知識の総和でもなければ、特殊科学の知識を成立させる、単に主観的な根拠(認識論的根拠)の知識でもない。それはすべての存在者を根拠づける、究極の実在的根拠の知識である。したがって、特殊な領域と視野を越えた、超越の視野において得られる超越的知識である。この超越の視野は、認識するものとしての人間が自己の存在根拠へと還帰してゆく根源還帰の道において得られる。時間を超える永遠が知られるのもそこであり、人間存在が究極において根ざす根源をそこにみいだすことができる。

 形而上学を学問として確立した最初の人はアリストテレスである。彼は「存在者としてある限りにおける存在者について」普遍的にその第一の原理・原因を探究する学問を「第一哲学」(ヘー・プローテー・フィロソフィアーhe prōtē philosophia)とよび、その学問体系の最高位に位置させた。それは、いっさいの究極の実在根拠としての神の知識でもあり、そのように高貴な知識として「知恵」(ソフィアーsophia)ともよばれた。「形而上学」(メタフィシカ)という名称は、この第一哲学に関する書物が前1世紀のロードスのアンドロニコスによる全集編纂(へんさん)において、自然学(フィシカphysica)に関する書物の後に置かれたところから「自然学の後の書」(タ・メタ・タ・フィシカta meta ta physica)とよばれたことに由来するといわれる。しかしのちには、この名称は、生成消滅する自然物のかなたに、これを根拠づける永遠不滅の原理を求めるものとしてのこの学問の内容に関係づけられるようになった。

 変化する自然物の背後に、その存在根拠として永遠不変の実在を求めようとする究知は、ギリシア哲学にとって本質的であり、この意味で、ギリシア哲学は一般に形而上学的であったといえる。このような究知は、全世界の創造者として永遠な神を認めるキリスト教にとってもふさわしいものであり、したがってギリシアの形而上学は中世キリスト教神学の体系にも大幅に受容され、そこでいっそうの深化発展を与えられた。

 しかし、近代科学の成立は、この古代・中世を貫く統一的な世界像を破壊し、特殊科学の方法に従って得られるものだけが、唯一の実在認識として一般に認められるようになった。これは形而上学の崩壊であり、カントは理論的な学問としての形而上学を否定した。神話的、形而上学的、実証的という3段階を経て知識が進歩するとするコントの実証哲学の考えは、この近代の考え方を代表するものである。

 今日においては、科学を知識の模範とするこの近代の考え方に従う人々もなお多いが、他方において、これを克服して、哲学を科学とは異なる根源の知とする哲学者も多くなってきた。これとともに、形而上学はその栄誉を回復し、形而上学の歴史は新たな意義を獲得するに至った。20世紀になされたこの形而上学の復興に貢献した人としては、ベルクソンハイデッガーの名が記憶される。

[加藤信朗]


形而上学(アリストテレスの著述)
けいじじょうがく
Metaphysica

アリストテレスの著述。アリストテレス自身の呼び名では「知恵」(ソフィアー)、「神学」(テオロギケー)、「第一哲学」(ヘー・プローテー・フィロソフィアー)とよばれる学問に属する諸論稿の集成。現在の呼び名は、紀元前1世紀の全集の編集者ロードスのアンドロニコスがこの書を自然学関係書の後に置いたことに由来し、「自然学の後の書」(タ・メタ・タ・フィシカ)の意味だとされる。アリストテレスによれば、優れた意味で知識とよばれうるものは「原因による認識」であるが、もしも、すべての存在事物について、それらのいっさいの第一の諸原理や第一の諸原因が認識されるとするならば、この知識はもっとも普遍的な原因認識であり、それこそ「知恵」の名にふさわしいものとなる。それはもっとも尊貴な、もっとも神的な知識であって、神がもつのにふさわしい知識である。だが、もしも、原因による認識が論証による認識を意味するとすれば、それは或(あ)る特定の類に属する存在事物についてのみありえ、すべての存在事物についてはありえないとするのが『分析論』の帰結であった。

 そこで、まず、この普遍学としての「第一哲学」が、どのような資格で一つの学問知識でありうるかが問われる。「すべての存在事物について、それらが〈ある〉といわれる限りにおいて、この〈ある〉を成り立たせている第一の諸原理、諸原因、諸要素を尋ねる」という有名な定式(「存在としての存在の学」)は、この学問の方法的基礎を明示するものである。この「ある」を成り立たせている第一の諸原理、諸原因の秩序が究極には第一の存在者である神になんらかの意味で依存すると構想される限りで、この学問が「神学」ともよばれる理由がある。

 本書は本来、知恵の定義から始めて、「ある」の原因に関するこれまでの哲学者たちの見解を提示し、「ある」の諸義の分析、「ある」の諸義における第一のものである実体(ウーシーアー)の論を経て、最後に、実体の存在を究極に根拠づけるものとしての第一の実体(神)の論にまで上昇する一連の上昇階梯(かいてい)として構想されていたと考えられる。ただし、この構想は何度か構想されながら、終極的にはその完成をみないまま終わった。今日われわれがもつものは、異なった時期に執筆され、相互の脈絡がかならずしも明瞭(めいりょう)ではない、この学問に属する幾群かの論稿の集成である。本書を構成する諸巻の相互関係、その成立史の研究は、20世紀の初めW・イェーガーによるアリストテレス哲学の発展史的研究の端緒になった。

[加藤信朗]

『W. JägerStudien zur Entwicklungsgeschichte der Metaphysik des Aristoteles (1912, Berlin)』『Aristoteles, Grundlegung einer Geschichte seiner Entwicklung (1925, Berlin)』

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改訂新版 世界大百科事典 「形而上学」の意味・わかりやすい解説

形而上学 (けいじじょうがく)
metaphysics

哲学の諸分野,諸原理の最高の統一に関する理論的自覚体系。語源的には,アリストテレスの講義草稿をローマで編集したアンドロニコスが,《自然に関する諸講義案(タ・フュシカ)》すなわち自然学の後に(メタ),全体の標題のない草案を置き,《自然学の後に置かれた諸講義案(タ・メタ・タ・フュシカ)》と呼び,これがメタフュシカmetaphysicaと称されたことに基づく。内容的には,第二哲学としての自然学に原理上先立つ存在者の一般的規定を扱う第一哲学,自然的存在者の運動の起動者としての神を扱う神学を含む。ここから,自然的存在者の諸分野,諸原理を超えた(トランス)最高の原理,実在を扱う超自然学と解され,のち一般に経験的現象を超越した実在,原理あるいは仮説,想定に関する理論的考察という意味に使用される。邦訳語の形而上学は《哲学字彙》(1881)以来で,有形の器すなわち自然の形象を超えた無形の道すなわち原理の学の意味であり,形而上の出典は《易経》である。

 西洋で哲学の分野に一般形而上学と特殊形而上学との区分を導入したのは,スアレスの影響下の17世紀のデュアメルJean-Baptiste Duhamel以来とされ,この区分はC.ウォルフに引き継がれる。一般形而上学は第一哲学の系統をひき,存在者一般に共通な普遍的規定を扱い,ウォルフはこれを存在論と呼ぶ。特殊形而上学は神学,宇宙論,霊魂論に分かれ,神,世界,人間を対象とする。カントはウォルフを含めて在来の形而上学は存在者の認識の可能性を無視した独断的形而上学とし,認識の起源,範囲,権能を人間理性の自己吟味に求め,理性能力の批判的画定を予備学として,自然と道徳の両面にわたり形而上学を学として建設しようとした。客観を観想する形而上学はここに主観に基づく形而上学へと転換するが,ドイツ観念論の形而上学的諸体系はカントの拒否する知的直観を絶対者に適用し,ヘーゲルの絶対的観念論へと転化する。このヘーゲルの体系を消極哲学すなわち合理主義的本質主義と断じ,意志に対してのみ出現する個別的現実存在を原理とするシェリング晩年の積極哲学は,ショーペンハウアーとニーチェとの意志の形而上学の先駆となるとともに,19世紀後半以降の現実存在ないし実存の哲学への端緒でもある。19世紀後半は実証主義の隆盛による形而上学の衰退と特徴づけられるが,二つの世界大戦は認識論的な反形而上学の立場から,有限な人間の人間本性の展開に基づく人間の形而上学を復活させた。ベルグソン,シェーラー,ハイデッガー,ヤスパースなどの試みがそれである。他方,後期ハイデッガーは西洋の歴史を形而上学の歴史とし,その極を技術すなわち原子力時代の形而上学と見,形而上学の克服は在来の形而上学の始原とは別の始原の到来によるほかはないとする。日本では明治以来,現象即実在論が説かれ,また西田幾多郎,田辺元,和辻哲郎,高橋里美のように,何らかの形で無を原理とし弁証法に訴える型の形而上学が企てられてきたが,われわれの風土の精神的自覚体系への試みはまだ途上である。
執筆者:


形而上学 (けいじじょうがく)
Metaphysica

アリストテレスの主著の一つ。原題の〈メタフュシカ〉は本来〈自然学(フュシカ)の後に(メタ)あるもの〉という意味で,彼の死後2世紀余を経てその講義用論文が集められて〈著作集〉に編まれた際の配列に由来すると伝えられる。この名称は,この書の内容のゆえに〈自然学を超えてあるもの〉と解されるようになり,一般にある学問をそれを超えた視点からとらえて基礎づけを行う学問を〈メタ~学〉と呼ぶ〈メタ〉の用法もここから生じた。この書は全14巻からなり,著作時期も意図も異にする幾つかの部分が先述の編集によって寄せ集められたもので,彼の哲学の中心を形づくる重要な概念が集約して現れている。哲学の求めるべき〈知〉はどのようなものであるかがこの書の中心問題である。彼は〈理論(観想)的学問〉を,〈実践学〉や〈製作学〉から区別したうえでさらにその研究対象の違いによって〈自然学〉〈数学〉〈第一哲学〉の三つに分ける。この〈第一哲学〉は〈永遠で不動な独立存在〉について研究するもので,いわゆる〈形而上学〉にあたり,彼自身〈神学〉とも呼ぶものである。彼の〈第一哲学〉は〈存在を存在という資格で普遍的に考察する〉ということと,自然界の動の第一原因である〈不動の動者〉としての神を考察することという二重の課題を負わされている。この書にはこのほか,彼以前の哲学説に関する記述や,哲学用語の検討など多彩な内容が含まれている。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「形而上学」の意味・わかりやすい解説

形而上学【けいじじょうがく】

英語metaphysicsなどの訳。この訳語は《易経》の〈形而上を道と謂(い)う〉の語に基づき,《哲学字彙》(1881年)以来のもの。原語はアリストテレスの講義草稿を整理する際,編者のアンドロニコスが,自然学(フュシカ)の後に(メタ)無題の草稿を置いて,〈自然学の後に置かれた諸講義案(タ・メタ・タ・フュシカ)〉と呼んだことに由来する。第二哲学たる自然学に先立つ原理学としての第一哲学,神学のこと。最も基本的には,経験において与えられる具体的・個別的なものを超越して,全体的・究極的・絶対的にみる哲学の部門をいう。17世紀にウォルフが哲学を形而上学(理論)と実践哲学(実践)に分けて以来,カント,ヘーゲル,ニーチェ,ヤスパース,ハイデッガー,ベルグソンらによって批判を含む多様な展開が図られたが,一方で実証主義,マルクス主義,論理実証主義,プラグマティズムなど反形而上学を標榜する思潮もあって帰趨は定めがたい。
→関連項目イメージ認識論

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世界大百科事典(旧版)内の形而上学の言及

【アリストテレス】より

…彼の哲学を完結した体系として扱う後世の研究態度はここに由来する。〈著作集〉中の主要な作品を伝統的な配列に従って列挙すると,(1)〈オルガノン〉(〈道具〉の意)と総称される論理学的著作:《カテゴリアイ(範疇(はんちゆう)論)》《命題論》《分析論前書》《分析論後書》《トピカ(論拠集)》《ソフィストの論駁法》,(2)自然学:《自然学講義》《天体論》《生成消滅論》《気象学》《デ・アニマ(心魂論)》《自然学小論集》《動物誌》《動物部分論》《動物運動論》《動物進行論》《動物発生論》,(3)第一哲学:《形而上学》,(4)実践学・製作学:《ニコマコス倫理学》《エウデモス倫理学》《政治学》《弁論術》《詩学(創作論)》となる。これとは別に最初から公表を意図して書かれた作品もあったが,以後しだいに忘れられるようになり,今日では《魂について(エウデモス)》《哲学のすすめ(プロトレプティコス)》《哲学について》などの一部が,後世の人が断片的にまたは要約して引用した形で残されているにすぎない。…

【西洋哲学】より

…ここでは,西洋のこの哲学知の基本的概念装置を検討し,この知の本質的性格と,それを原理に形成された西洋文化の特質を洗い出してみたい。
【自然(フュシス)と形而上学(メタフュシカ)】
 ギリシアの古典時代にソクラテスやプラトン,アリストテレスらの思想のなかで生まれ形をととのえたこの〈哲学〉と呼ばれる知は,当時のギリシア人の一般的なものの考え方に対していかなる関係にあったのか。それを昇華し純化するものであったのか,それともそれとはまったく異質のものであったのか。…

【アリストテレス】より

…彼の哲学を完結した体系として扱う後世の研究態度はここに由来する。〈著作集〉中の主要な作品を伝統的な配列に従って列挙すると,(1)〈オルガノン〉(〈道具〉の意)と総称される論理学的著作:《カテゴリアイ(範疇(はんちゆう)論)》《命題論》《分析論前書》《分析論後書》《トピカ(論拠集)》《ソフィストの論駁法》,(2)自然学:《自然学講義》《天体論》《生成消滅論》《気象学》《デ・アニマ(心魂論)》《自然学小論集》《動物誌》《動物部分論》《動物運動論》《動物進行論》《動物発生論》,(3)第一哲学:《形而上学》,(4)実践学・製作学:《ニコマコス倫理学》《エウデモス倫理学》《政治学》《弁論術》《詩学(創作論)》となる。これとは別に最初から公表を意図して書かれた作品もあったが,以後しだいに忘れられるようになり,今日では《魂について(エウデモス)》《哲学のすすめ(プロトレプティコス)》《哲学について》などの一部が,後世の人が断片的にまたは要約して引用した形で残されているにすぎない。…

【存在論】より

…ギリシア語の〈在るものon〉と〈学logos〉から作られたラテン語〈オントロギアontologia〉すなわち〈存在者についての哲学philosophia de ente〉に遡(さかのぼ)り,17世紀初頭ドイツのアリストテレス主義者ゴクレニウスRudolf Gocleniusに由来する用語。同世紀半ば,ドイツのデカルト主義者クラウベルクJohann Claubergはこれを〈オントソフィアontosophia〉とも呼び,〈存在者についての形而上学metaphysica de ente〉と解した。存在論を初めて哲学体系に組み入れたのは18世紀のC.ウォルフであり,次いでカントであった。…

※「形而上学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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