改訂新版 世界大百科事典 「農業基礎論」の意味・わかりやすい解説
農業基礎論 (のうぎょうきそろん)
Nóng yè jī chǔ lùn
1962年9月の中国共産党中央委員会で決定した政策の総称。〈農業を基礎とし,工業を主導とする〉方針を簡略化して農業基礎論と呼ぶ。1959,60年の農業面における2年連続の大凶作,60年7月のソ連の経済・技術協定の破棄で,中国は経済危機に直面した。その危機を救うために,諸分野の経済的規制をゆるめ,農業重視の政策を打ち出したもの。農業投資の配分を増大させたのみならず,重工業内部構造の改編に着手,農業機械工業,化学肥料・農薬工業の発展に力を注いだ。以上は具体的な政策であるが,経済原理の方面では,中国の指導者が,経済発展の規模は農業余剰によって限界づけられるという重農主義や古典経済学の命題を理解した時期である。農業基礎論はこの命題の認識が浅かった第1次五ヵ年計画(1953-57)や鉄を中心とする重工業化を強行した大躍進期(1958-60)への批判にもなっていた。
執筆者:小島 麗逸
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