日本大百科全書(ニッポニカ) 「選別融資」の意味・わかりやすい解説
選別融資
せんべつゆうし
金融機関が企業等に対し、その信用度・取引効率などの観点から判断して取引上の優先順位をつけ、選別的に融資すること。これと反対に、企業等が金融機関取引の親密度・効率性・規模などを考慮して、取引対象の金融機関を選別的に整理・集約することを「逆選別」という。金融機関はもともと、事業内容が優れ、したがって貸出債権保全上のリスクが少ない企業との取引を積極化するから、この意味では融資それ自体が選別融資になりやすい。一般に、選別融資は金融引締め期に貸出量の制約があるときや、不況期に企業の業績が悪化するような場合に増加する。逆に金融緩慢期や好況時などの借り手市場傾向のときに減少する。昭和50年代以降の低成長経済下の企業資金需要の相対的な弱まりの際には、選別融資はやや後退した。だがその後、銀行の自己資本比率規制やバブル経済崩壊、不況深化など金融機関の経営環境が厳しくなったことから、全般的には信用リスク管理の一環として融資時の審査が厳格になり、選別化傾向がある。
[井上 裕]