酸成長(読み)さんせいちょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「酸成長」の意味・わかりやすい解説

酸成長
さんせいちょう

草本性植物の茎や子葉鞘(しようしょう)の切片を、いろいろな水素イオン濃度pH)の緩衝液に浸すと、pHの価が低いところで、その伸長成長が大きくなる。このように酸条件で誘導される成長を酸成長という。

 前述の切片を、植物ホルモンのオーキシン溶液に浸すと、著しい伸長促進がみられるが、この場合、切片組織からのプロトン(H+)の分泌も著しく促進される。これらのことから、次のような考えが提出されている。つまり、オーキシンは、細胞膜上にあるプロトンポンプ(能動輸送を行う膜タンパク質)に作用して、細胞膜からその外側の細胞壁にプロトンを分泌させ、その結果pHが低下する。この作用によって、細胞壁に存在するある種の酵素が活性化されて、細胞壁構造を緩めるように働くという考えである。

 植物ホルモンではないが、フシコクシンというカビ代謝産物は、オーキシンよりも強いプロトン分泌誘導の作用があり、伸長促進もまた著しい。

[勝見允行]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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