緩衝液(読み)カンショウエキ

デジタル大辞泉 「緩衝液」の意味・読み・例文・類語

かんしょう‐えき〔クワンシヨウ‐〕【緩衝液】

緩衝溶液

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精選版 日本国語大辞典 「緩衝液」の意味・読み・例文・類語

かんしょう‐えき クヮンショウ‥【緩衝液】

〘名〙 外から酸や塩基を加えても、水素イオン濃度pH)をほぼ一定に保つ溶液生体原形質血漿(けっしょう)などにも、生体内の水素イオン濃度を一定に保つ作用がある。

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化学辞典 第2版 「緩衝液」の解説

緩衝液
カンショウエキ
buffer solution

外からの作用に対して,その影響を和らげようとする性質をもつ溶液を,一般に緩衝液あるいは緩衝溶液という.【】通常は,溶液の水素イオン濃度に対していい,ある程度の酸または塩基の添加消失にかかわらず,ほぼ一定の水素イオン濃度を維持する作用をもつ溶液をいう.溶液の pH を一定に保つ必要がある場合に使用され,またガラス電極によるpH測定のとき,比較標準溶液として用いられる.一般に,緩衝液は弱酸とその塩,または弱塩基とその塩との混合溶液である.弱酸HAとその塩BAの混合溶液について考えれば,HAは,

     HA H + A(1) 

のように解離するが,その程度はわずかである.一方,BAは完全に解離する(BA → B + A)ので,混合溶液中の A の濃度は塩BAの濃度によって定められる.この溶液に外から H が加えられると,式(1)の反応は右から左へ進み,加えられた H大部分はHAとなるので,溶液の水素イオン濃度はほとんど変化しない.また,OH が加えられたときには,溶液中の H は中和されて除かれるが,式(1)の反応が左から右へ進み,ふたたび H を生成するので,この場合も水素イオン濃度はほとんど変化しない.このような作用を緩衝作用といい,緩衝作用をもつ溶液が緩衝液である.緩衝液は,1909年,S.P.L. Sφrensen(セレンセン)が塩酸あるいは水酸化ナトリウムとグリシン,リン酸,クエン酸ホウ酸などとその塩の混合物を用いてはじめてつくった.緩衝液には,このセレンセン緩衝液のほか,クラーク-ラプス緩衝液(pH 1.0~10.0),コルトフ緩衝液(pH 2.0~12.0),ミハエリス緩衝液(pH 1.4~11.0),マッキルベン緩衝液(pH 2.2~8.0),メンツェル緩衝液(pH 8.4~11.4),ワルポール緩衝液(pH 0.65~5.6),ブリトン-ロビンソン緩衝液(pH 1.8~12.0)などが用いられる.また pH 測定の比較標準緩衝液としては,シュウ酸塩標準液(pH 1.68,25 ℃),フタル酸塩標準液(pH 4.01,25 ℃),リン酸塩標準液(pH 6.86,25 ℃),ホウ酸塩標準液(pH 9.18,25 ℃),および炭酸塩標準液(pH 10.02,25 ℃)の5種類がある.【】互いに共役関係にある酸化剤還元剤両者を含む溶液は,この溶液にほかの酸化剤あるいは還元剤をある程度の量を加えても,溶液の示す平衡電位はほとんど変化しない.このような溶液は電位緩衝液とよばれる.1948年,N.H. Furmanによって名づけれらた.電位緩衝液を用いれば,その溶液の示す酸化還元電位を一定値に保つことができ,定電流電解(還元の場合を考える)を行う場合には,指示電極の電位を一定に保ち,これより陰の析出電位をもつ物質の析出を防ぐことができる.【】金属イオン Mn と,Mn に配位して水溶性の安定な錯体 ML(nb)+ をつくる配位子 Lb を含む溶液においては,

     Mn + Lb ML(nb)+(2) 

の平衡が成立する.この場合,Mn の濃度に比べて Lb および ML(nb)+ の濃度が非常に大きいとすれば,この溶液に Mn をある程度加えても,また取り除いても,式(2)の平衡がそれぞれ左から右へ,あるいは右から左へ進んで,溶液中の遊離の金属イオン濃度はほとんど変化しない.このように,溶液から多少の金属イオンの出入があっても,金属イオン濃度をほとんど一定に保つ作用をもつ溶液を,金属イオン緩衝液という.配位子としてはEDTAおよびその類似化合物が広く用いられる.このような緩衝液を用いることにより,反応系中のpMを調節して副反応をおさえたり,また反応機構の解明に用いられる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「緩衝液」の意味・わかりやすい解説

緩衝液 (かんしょうえき)

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

栄養・生化学辞典 「緩衝液」の解説

緩衝液

 バッファーともいう.酸,アルカリが加わった場合に,水素イオン濃度の変化を少なくする作用をする液.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の緩衝液の言及

【緩衝溶液】より

…しかし,弱酸とその塩,または弱塩基とその塩を含む溶液の場合には,少量の強酸や強塩基を添加してもpHがごくわずかしか変化しない。すなわち,後者の場合には,溶液中の水素イオンの濃度をできるだけ一定に保とうとする能力(緩衝能)があるわけで,このような溶液を緩衝溶液または緩衝液という。一般に,ある酸とその共役塩基との混合物を用いるとpHについての緩衝溶液をつくることができる。…

※「緩衝液」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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