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能動輸送 のうどうゆそうactive transport

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

能動輸送
のうどうゆそう
active transport

活性輸送ともいう。細胞膜などの生体膜を通して行う物質の輸送の一形式。単に熱力学的平衡に向う拡散運動によるのではなく,エネルギー供給系と共役して行われる物質の移動をさす。拡散的機構によるものを受動輸送というのに対する語。濃度勾配あるいは電気化学的勾配に逆らって物質が押動かされることも多いので,uphill transportが似た意味に使われるが,濃度勾配を下る輸送が能動的機構によることもありうるので,必ずしも一致しない。エネルギーとの共役の機構は,膜での輸送酵素によることもある。動物細胞膜のナトリウム-カリウム ATPaseは最もよく研究の進んでいる例で,アデノシン三リン酸 ATPを分解するエネルギーによって,ナトリウムとカリウムのイオンを細胞膜内外間で能動輸送する。ほかにもイオンポンプの特殊な例として,光のエネルギーを利用してイオン輸送を行うバクテリオロドプシン,電子伝達のような酸化のエネルギーを利用してイオン輸送を行うシトクロムオキシダーゼなどもある。また,細胞膜の突出または陥入によってできる小胞に包まれて,物質が外部から細胞膜を通して取込まれる機構 (エンドサイトーシス) ,逆に小胞を介して物質を細胞外へ排出する現象 (エキソサイトーシス) があり,これもエネルギー依存性である。

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知恵蔵の解説

能動輸送

細胞膜を通じて特定の物質を濃度勾配に逆らって細胞内に取り込み、または細胞外へ排出すること。能動輸送に必要なエネルギーはポンプと呼ばれる伝達機構によって供給される。イオンを能動輸送するイオンポンプの実体は細胞膜にある輸送酵素で、たとえばナトリウムポンプの実体はナトリウム‐カリウム‐ATPアーゼで、この酵素によって分解されたATPのエネルギーを利用してナトリウムが細胞外へ、カリウムが細胞内へ輸送される。細胞膜以外の生体膜でも能動輸送は見られ、たとえばミトコンドリア葉緑体などの生体膜などにあるプロトンポンプ(プロトン‐ATPアーゼ)は水素イオンの能動輸送を行う。

(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2007年)

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デジタル大辞泉の解説

のうどう‐ゆそう【能動輸送】

生体膜を通して物質が移動するとき、細胞膜内外の濃度勾配に逆らい、エネルギーを消費して透過すること。ATP(アデノシン三燐酸(りんさん))の分解で生じるエネルギーを用いて、細胞内からナトリウムイオンを運び出し、カリウムイオンを取り込む機構などにみられる。

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百科事典マイペディアの解説

能動輸送【のうどうゆそう】

細胞膜を通じて行われる物質輸送のうち,その物質の濃度勾配(こうばい)に逆らってエネルギーを消費して行われる場合をいう。その際,ATPが消費される。拡散による透過性(受動輸送)に対し,特異性のある選択的輸送が特徴。
→関連項目吸収(生物)細胞膜

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栄養・生化学辞典の解説

能動輸送

 生体膜を通して行われる物質の担体輸送.電気化学ポテンシャルの勾配に逆らって輸送することで,ATPのエネルギーを消費して輸送が行われる.

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世界大百科事典 第2版の解説

のうどうゆそう【能動輸送 active transport】

生物は化学的あるいは電気化学的こう配に逆らって物質を輸送する機構を有しており,この代謝的エネルギーに依存した輸送過程を,能動輸送と呼ぶ。細胞膜や細胞内小器官膜はそれぞれの生理機能に対応する内部のイオン環境を維持している。これらのイオン不均一分布には能動輸送過程が関与している。細胞内の主要な1価カチオン(陽イオン)はカリウムイオンK,内部環境はナトリウムイオンNaであり,およそその濃度比は15:1になっている。

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大辞林 第三版の解説

のうどうゆそう【能動輸送】

生体膜を通じて、濃度勾配・電位勾配などに逆らって代謝エネルギーを消費しながら物質を移動させる過程。例えば、赤血球にみられる、 ATP の分解を伴う Na+ の排出と K+ の取り込みなど。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

能動輸送
のうどうゆそう

生体膜を通して、物質をその濃度勾配(こうばい)に逆らって移動させる過程をいう。その物質がイオンの場合は、濃度勾配と膜内外の電位差による電気化学的ポテンシャルの勾配に逆らう輸送をいい、それを行う機構をイオンポンプという。能動輸送に必要なエネルギーはアデノシン三リン酸(ATP)の加水分解によって得られるため、呼吸や解糖などを阻害してATPの供給を断てば、能動輸送も停止する。一般に細胞膜には、10倍以上の濃度差に抗して細胞内からナトリウムイオン(Na+)を細胞外に運び出す機構があり、ナトリウムポンプとよばれている。この機構はまた同時に細胞外からカリウムイオン(K+)を細胞内に運び込む機構と共役しているため、Na+‐K+交換ポンプともいわれる。ナトリウムポンプの実体と考えられるものは、細胞膜にあるNa+とK+により活性化されるATP加水分解酵素(ATPアーゼ)である。この酵素はウアバインにより特異的に阻害されるが、またウアバインによってナトリウムポンプも停止する。イオンポンプはきわめて特異性が高く、ナトリウムイオンと似た性質をもつリチウムイオン(Li+)も運搬しない。小腸上皮では、糖やアミノ酸が、直接エネルギーを消費して運搬されているようにみえるが、これは、ナトリウムポンプによりつくられたNa+の濃度勾配に依存する輸送であり、共(きょう)輸送といわれる。イオンポンプにはナトリウムポンプのほか、カルシウム(Ca2+)ポンプ、塩素(Cl-)ポンプ、プロトン(H+)ポンプなどがある。これら種々のイオンポンプは類似の分子構造をもち、その構造と機能の関係が調べられている。能動輸送は、細胞内イオン環境の維持、吸収のほか、浸透圧調節、排出など多くの基礎的な生物学的機能に深く関係している。[村上 彰]

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世界大百科事典内の能動輸送の言及

【ATPアーゼ】より

…ATP(アデノシン三リン酸)をADP(アデノシン二リン酸)と無機リン酸に加水分解する酵素の総称。ATPアーゼ作用を示すタンパク質(酵素)はいずれも,生体内においては同時になんらかの機械的仕事(運動),浸透圧的仕事(能動輸送)などをおこなう機能タンパク質である。すなわち生体は,常になんらかの物理的仕事に対するエネルギーの供給と共役したかたちでATPを分解するように造られており,ATPがむだに加水分解されることはない。…

【吸収】より

…細胞に取り込まれて吸収される場合は,単純な拡散で吸収される受動的吸収と,濃度の低いほう(管腔内)から高いほう(細胞内)に濃度こう配に逆らって吸収される能動的吸収とに区別できる。能動的な吸収は,吸収細胞が正常の代謝を営んでいないと起こりえず,エネルギーを消費する特殊な細胞機序を基盤としており,このような物質の輸送を能動輸送という。ブドウ糖,ガラクトース,アミノ酸などの栄養素の腸管吸収はこの例である。…

【排出】より

…つぎにこのろ液(原尿)が細尿管内を流れるあいだに,水,ブドウ糖,無機塩類などの必要な物質は再吸収されて血液中にもどり,余分な物質やろ過が不十分であった物質は,血液中から細尿管内に分泌され,最終的に尿ができる。再吸収と分泌の過程では,濃度こう配に逆らって濃度の低い側から高い側へ物質が輸送されることもある(能動輸送)。その結果,物質の種類によって血中濃度にたいする尿中濃度の比(U/P比)に大きな差を生じる。…

※「能動輸送」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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