野生種(読み)やせいしゅ(その他表記)native (wild) species

改訂新版 世界大百科事典 「野生種」の意味・わかりやすい解説

野生種 (やせいしゅ)
native (wild) species

栽培・飼育化されている作物家畜と同一種あるいは近縁種のもので,野生の生物種のこと。とくに作物,家畜の直接の祖先とされる野生種は野生祖先種といわれる。イネ属の例では,20種近い野生種,すなわち野生稲が知られている。栽培イネは野生祖先種が判明しているが,現在すでに野生祖先種が消滅していたり,同定がされていない作物もある。コムギの例では,一粒系コムギ,二粒系コムギ,チモフェービ系コムギの3群で,それぞれ1種の野生種が存在しているが,パンコムギで代表される普通系コムギは,栽培種ばかりで野生種は知られていない。この群は栽培二粒系コムギと野生のタルホコムギの間の雑種に由来している。一方,栽培されていた作物や家畜の一部が野生化することもあるが(例,野生ウマ),これも野生種として扱う。オオムギの野生種といわれるものの中にはこのような栽培種が野生化したと推測されるものもみられる。野生種は,人為の加わらない自然条件下で生存するための諸特性を備えており,人類による栽培,飼育には適さない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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