改訂新版 世界大百科事典 「野生稲」の意味・わかりやすい解説
野生稲 (やせいとう)
wild rice
イネ属Oryzaの野生植物をいう。現在世界で約20種が知られており,アジア,アフリカ,オセアニアおよび中南米の熱帯から亜熱帯の地域に広く自生している。栽培される2種類のイネはこれら野生稲の一部のものから生じたとされる。世界的に広く栽培されているイネ(アジアイネ)O.sativa L.はO.perennis Moenchから,またアフリカの限られた地域で栽培されているアフリカイネO.glaberrima Steud.はO.breviligulata Chev.et Roehr.からそれぞれ由来したとする見方が有力である。自生地では多年草または一年草で,草型は直立型から匍匐(ほふく)型まで変異に富んでいる。その多くは湿地を好み,種によっては塩水中でよく生育するものもある。いずれのものも出穂は不斉一で,穀粒は小型で穂から脱落しやすいなど,栽培稲とは異なった野生型の性質をもっている。ただし栽培稲と共通した環境条件を好むため,自生地の近くでは水田雑草となることが多く,その害が問題視されている。
→イネ
執筆者:山崎 耕宇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報