日本大百科全書(ニッポニカ) 「釜蓋朔日」の意味・わかりやすい解説
釜蓋朔日
かまぶたついたち
旧暦7月1日の異名。関東の諸地でいう。お釜の口明けという地方もある。この日は盆の魂祭りの始まりにあたり、精霊(しょうろう)様が家々に向かって出発するという考えから、地獄の釜の蓋のあく日と、おかしくよび始めたのであろう。ナス畑やイモ畑に行って、地面に耳をつけて聞くと、地獄の釜の蓋があく音がするとも、精霊が旅立つ日なので、その叫び声が聞こえるなどという。釜蓋餅(もち)といって餅を搗(つ)いたり、焼き餅をこしらえて食う所もあるが、単に名称だけを記憶している場合が多い。2月1日を乙子(おとご)の朔日、6月1日をムケの朔日、8月1日を八朔(はっさく)ついたち、12月1日を川渡り朔日など異名が多い。
[井之口章次]