国指定史跡ガイド 「鍋田横穴」の解説
なべたよこあな【鍋田横穴】
熊本県山鹿市鍋田にある横穴。熊本県北部、菊池川の支流、岩野川にかかる鍋田橋のたもとと、岩野川西岸の阿蘇凝灰岩の断崖面500mにわたって分布する、古墳時代後期につくられた横穴の群集墓。総数61基が確認され、そのうち16基に装飾がほどこされている。とくに有名なのが27号墓で、2重の飾り縁をもち、墓室は奥行き2m、幅2.5mの横長の方形をしており、床面は平坦である。左外壁に、両手足を広げた人物像、剣、鞆(とも)、6本の鏃(ぞく)を表現したやっこだこ形の靱(ゆぎ)(矢を入れる容器)、刀子(小型の刃物)と小型の靱、矢をつがえた弓、盾が配され、大小の靱の下には頭を羨道(せんどう)に向けた馬が浮き彫りで描かれている。これらは古代美術の白眉(はくび)とされ、1922年(大正11)に国の史跡に指定された。山鹿市内では、このほか長岩横穴群や城横穴群など多数の横穴群が点在しているが、鍋田横穴はわが国の装飾横穴の代表格といわれている。現在、周辺は鍋田いこいの森公園として整備されている。JR鹿児島本線玉名駅から産交バス「鍋田」下車、徒歩すぐ。