日本大百科全書(ニッポニカ) 「長谷雄草紙」の意味・わかりやすい解説
長谷雄草紙
はせおぞうし
鎌倉末期(14世紀前半)の絵巻。一巻。『長谷雄卿(きょう)草紙』『長谷雄卿絵巻』ともいう。平安時代(9世紀)の文人紀長谷雄(きのはせお)に関する怪異な物語を題材に詞(ことば)・絵各五段からなる。朱雀門(すざくもん)の鬼と双六(すごろく)の勝負に勝ち、賭(か)け物の美女を得た長谷雄が、鬼との約束を破って100日満たぬうちにこれと契ると、女はたちまち水と化して流れうせたという内容を描く。『続教訓抄』に類話がみられる。絵は飛騨守惟久(ひだのかみこれひさ)筆の伝承があるが確かでない。重要文化財。東京・永青(えいせい)文庫蔵。
[村重 寧]
『小松茂美編『日本絵巻大成11 長谷雄草紙他』(1977・中央公論社)』