化学辞典 第2版 「電気化学ポテンシャル」の解説
電気化学ポテンシャル
デンキカガクポテンシャル
electrochemical potential
イオンあるいは電子のような荷電粒子の単位量を,可逆的にある系にもち込むのに必要な仕事を,その荷電粒子のその系における電気化学ポテンシャルという.荷電粒子を系内に運び込むには,単に化学的組成の変化に対応する仕事のほかに,静電的な仕事をも考慮しなければならない.この静電的な効果を強調する意味で,E.A. Guggenheimの提案により,荷電粒子の熱力学的ポテンシャルをとくに電気化学ポテンシャルとよぶ.zieの電荷(符号を含む)をもつイオンiの内部電位φα の相α中における電気化学ポテンシャルiαの内容は,第一近似として,静電的な仕事ziFφα(Fはファラデー定数)とイオンiと相αとの化学的相互作用にもとづく仕事,すなわちイオンiの化学ポテンシャルμiαとの和で与えられる.すなわち,
iα = μiα + ziFφα
となる.この仮定はまったく便宜的なもので,その明確な物理的意味は存在しないが,実際には,多くの物理化学的現象をこの仮定を用いて合理的に説明できることが知られており,荷電粒子の関与する種々の現象を検討するのに広く用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報