化学ポテンシャル(読み)かがくぽてんしゃる(英語表記)chemical potential

日本大百科全書(ニッポニカ) 「化学ポテンシャル」の意味・わかりやすい解説

化学ポテンシャル
かがくぽてんしゃる
chemical potential

ある化学種i単体または化合物)が混合物中に存在するとき、その化学種1モル当りの自由エネルギーギブス自由エネルギー)を化学ポテンシャルμiという。ある化学種の1モル当りの自由エネルギーは、化学種が1種類だけの純粋な系では、その系の自由エネルギーをそのモル数で割れば求められるが、混合物の場合には、
  μi=(∂G/∂Ni)T,p,Nj  (ji)
により求められる。すなわち、温度T圧力pが一定の下で、混合物にその化学種iを微少量dNi モル加えたときの自由エネルギー増加 dGから、この式によって求められるのである。混合物の自由エネルギーは、Gが質量変数であるので、

となり、それぞれの化学種の自由エネルギーの合計()となる。このように化学ポテンシャルは、ある化学種が混合物中にあるときの自由エネルギーなので、化学平衡などの取扱いに用いられる。

[戸田源治郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「化学ポテンシャル」の意味・わかりやすい解説

化学ポテンシャル
かがくポテンシャル
chemical potential

化学反応において原系と生成系の自由エネルギーの大きさを比較すれば,その反応が右向きに進むか,左向きに進むかがわかる。自由エネルギーは温度,圧力,組成に依存するが,そのうちで組成に依存する部分を化学ポテンシャルといい,次のように定義される。成分1,2,…,i ,…のモル数がそれぞれ n1n2 ,…,ni ,…の混合物の成分 i の化学ポテンシャルは,温度 T ,圧力 P および i 以外の他の成分を一定に保ったとき,i 成分を 1mol 加えたときの自由エネルギーの増加量として定義される。一般には μi=(∂G/∂ni)T,P,nj(ji) の形で表わされる。ただし,μ,G はそれぞれ化学ポテンシャル,自由エネルギーである。重力の場で物体がポテンシャルの高いところから低いところに向うように,物質も化学ポテンシャルの高いほうから低いほうに向って自発的に移動する。 (→熱力学 )

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

お手玉

世界各地で古くから行われている遊戯の一つ。日本では,小豆,米,じゅず玉などを小袋に詰め,5~7個の袋を組として,これらを連続して空中に投げ上げ,落さないように両手または片手で取りさばき,投げ玉の数や継...

お手玉の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android