化学辞典 第2版 「内部電位」の解説
内部電位
ナイブデンイ
inner potential
真空中に置かれた電気伝導性の相の内部の点が真空中無限遠の点に対してもつ電位差.電気伝導性の相αの内部(相表面の影響を無視できるような場所)へ,真空中無限遠より,点電荷qを無限にゆっくりと運び込むために要する静電的仕事をwとするとき,比w/qのq→0における極限値,すなわち,
(w/q)
により定義される静電ポテンシャルを相αの内部電位という.上記は二つの過程に分けられる.すなわち,点電荷qを
(1)真空中無限遠よりα相のすぐ外側で鏡像力の及ばない点(相表面より1~0.1 μm 程度離れた点)まで運ぶ過程.
この過程に要する静電的仕事 w1 に対応して定義される極限値
(w1/q)
をα相の外部電位とよぶ.
(2)その点よりα相の境界面を通ってα相の内部へ運び込む過程.
ここで,要する静電的仕事 w2 に対応して定義される極限値
(w2/q)
をα相の表面電位(相の外側から内側へ向かって電位が増加するとき正の値をとる)とよぶ.したがって,内部電位をφ,外部電位をψ,表面電位をχとすれば,次式の関係が得られる.
φ = ψ + χ
一般に,化学組成の異なる2相間電位差は通常の実験手段では測定することができないので,内部電位と表面電位は,上述のように明確に定義できるが,実測不可能な量である.これに対し,外部電位は真空中2点間の電位差であるので実測可能である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報