化学辞典 第2版 「電池の平衡電位」の解説
電池の平衡電位
デンチノヘイコウデンイ
equilibrium cell voltage, equilibrium cell potential
一対の単純電極系から構成されたガルバニ電池の開回路状態(回路を通して電流が流れていない状態)における端子間電圧を,電池の平衡電位あるいは可逆電位ともいう.平衡電位 Urev は電池反応の電気化学的平衡状態と一義的に結びつく量であり,電池反応に伴う定温定圧におけるギブズエネルギーの変化ΔGと,次のように結びつけられる.
ここで,nは電池反応に関与する電子数で,Fはファラデー定数である.さらに平衡電位と電池反応に関与する化学種の濃度との関係は,ギブズエネルギーの変化ΔGの内容を検討すれば,次のように与えられる.
ただし,ai,ci,yi および νi はそれぞれ化学種iの活量,モル濃度,活量係数および化学量論係数であり,RおよびTはそれぞれ気体定数および絶対温度である.ΔG °は標準状態におけるギブズエネルギーの値である.U °は電池の標準電圧とよばれ,温度・圧力一定のもとでは,電池反応に固有な量である.Uf°は式量標準電位とよばれ,活量係数の項を含んでいるので,溶液のイオン強度によって変化し,電池反応に固有な量とはならないが,Urev と ci の実測値から直接求められる量であるため,実用的な立場から有用な量である.さらに,平衡電位の一定圧力下での温度変化,一定温度での圧力変化は,電池反応のギブズエネルギーの変化ΔGとの関係を考慮して,次のように与えられる.
ただし,pは圧力,ΔH,ΔSおよびΔVはそれぞれ電池反応の定圧エンタルピー変化,定圧エントロピー変化,および定温体積変化である.一般に,電池の平衡電位は高精度に測定できることが多いので,電池反応が厳密に規定できる場合には,電気化学的な方法を用いて化学反応のエンタルピーやエントロピーを算出することが可能である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報