領邦教会(読み)りょうほうきょうかい(その他表記)Landeskirche[ドイツ]

改訂新版 世界大百科事典 「領邦教会」の意味・わかりやすい解説

領邦教会 (りょうほうきょうかい)
Landeskirche[ドイツ]

宗教改革の結果ドイツの領邦国家に生まれた教会制度。ドイツの領邦君主は中世後期から司教任命権や教会保護権を通じて教会への支配権を行使していたが,ルター派領邦君主は1527年以降司教区ごとに1名の監督を任命し,彼らによる教会巡察制度を導入し,牧師任免の権限をこれらの教会巡察官に与えた。42年最初にザクセン選帝侯領に設置された宗務局は,従来のカトリック教会がもっていた裁判機能を継承したにすぎなかったが,53年ビュルテンベルクに設けられた宗務局の場合のように,しだいに聖職者に対する監督権や懲戒権をもち,教会管理の中心的な機能を果たすようになり,領邦教会の重要な特徴をなした。ドイツの宗教紛争を終わらせたアウクスブルクの宗教和議(1555)の決定によって,〈支配者の宗教がその地の宗教〉という原則が生まれたことが,この領邦教会の制度を確立させた。それは領邦の帝国からの独立と同様,教会のローマからの分離と独立を意味した。なお,このような教会のあり方を,ドイツ以外の地域も含めて,一般に地方教会と呼ぶ。
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世界大百科事典(旧版)内の領邦教会の言及

【ドイツ】より

…ドイツの領邦国家はこの時代にローマ法の継受をも利用してその国家体制を整えつつあったのである。したがってルターが,一方においてローマ・カトリックならびにそれと結びついた皇帝に抗し,他方ミュンツァーなどの過激派を否定して,騎士戦争ドイツ農民戦争の動乱の中で秩序ある改革を推し進めようとするとき,彼は反皇帝的な諸侯権力と結びつかざるをえず,ルター派の教会は,諸侯を保護者とする領邦教会という形で実現することになる。その際諸侯は教会財産を接収して財政上の利益を得たのみならず,その管理下の領邦教会を通じて領民の精神生活をも支配しえたのである。…

【ドイツ福音主義教会】より

…宗教改革以後,ドイツのキリスト教会は,各領邦(ラント)ごとに,領主を首長とする統一組織となり,ルターに始まるルター派,カルバンの伝統に立つ改革派のいずれかとなった。のち両派の合同による合同派教会も生まれたが,政治形態が大きく変わっても,この領邦教会Landeskircheの形は変わらなかった。教会は国家から分離独立したが,公教育における宗教教育を行い,政府機関による教会税徴収等の特権を失ってはいない。…

※「領邦教会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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