改訂新版 世界大百科事典 「題壁詩」の意味・わかりやすい解説
題壁詩 (だいへきし)
tí bì shī
壁にじかに書きしるした詩。中国において壁は,古代から近代に至るまで,詩の伝達の場に用いられた。清の劉鶚(りゆうがく)の《老残遊記》にも題壁詩の実例がしるされている。梁の文豪沈約(しんやく)は,浙江省金華県に建てられた玄暢楼(げんちようろう)の壁に自作の〈八詠詩〉を書きしるし,以後玄暢楼は,八詠楼とも称された。唐代詩人にも〈壁に題す〉と題がつけられているものが数多くあるが,すべて〈題壁詩〉である。初唐の人である慧能(えのう)(南宗禅の始祖)が,〈本来無一物〉の句を含む悟境を示す詩を題壁して,五祖弘忍(ぐにん)に認められ,ついに六祖の衣鉢を与えられたという《六祖壇経(ろくそだんきよう)》の話はよく知られている。
執筆者:鈴木 修次
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