日本大百科全書(ニッポニカ) 「顔面けいれん」の意味・わかりやすい解説
顔面けいれん
がんめんけいれん
顔面筋の一部または全体におこる不随意収縮の総称で、顔筋けいれん、顔面筋の異常運動亢進(こうしん)ともよばれる。脳の器質的疾患(脳腫瘍(しゅよう)など)の部分症状としてもみられるが、機能的におこる場合が多い。30歳以上、とくに50歳代の女性に多くみられる。一般に、一側の顔面筋に不随性、発作性、反復性にけいれんをきたす。やや左側に多い。目や口の周囲筋に律動的な収縮がおこり、長期間続くこともまれでなく、精神的緊張などのストレスによって増悪しやすい。従来、心因性ともいわれていたが、近年、原因として、顔面神経が脳幹から出て数ミリメートルのところで髄鞘(ずいしょう)の移行部への圧迫があげられる。また、顔面神経に接触する小動脈の拍動が原因とされる例が少なくないといわれており、責任血管としては、前下小脳動脈がもっとも多く、ついで後下小脳動脈、その他椎骨(ついこつ)動脈、内耳動脈などがあり、ほかに静脈、腫瘍(しゅよう)が原因となることがある。このような場合には手術(ジャネッタJannetta法)による完治が期待できる。そのほか、薬物療法として、バクロフェン、カルママゼピン、クロナゼパム、ジフェニルヒダントインなどによるものがあり、ほかにボツリヌス毒素注入法、経皮的高周波凝固術がある。
[加川瑞夫]