日本大百科全書(ニッポニカ) 「風食礫」の意味・わかりやすい解説
風食礫
ふうしょくれき
風の侵食作用、とくに風とともに運ばれる砂の吹き付けによって特異な表面形態をもつ石。砂がやすりの働きをして表側が磨耗を受けて平滑な面を生ずる。このような面を切面という。切面と切面との間はとがった稜(りょう)となり、稜が一つのものを単稜石、三つのものを三稜石またはドライカンターdreikanterという。稜は卓越風の風食作用によってつくられるが、卓越風の方向が変わったり、石がずり動いて風に対する方向が変わると、数本になったり、1本になったり、不鮮明になったりする。切面のほかに表面に孔(あな)や溝を生ずる石もある。底面が平らで座りがよいものほど切面が発達する。風食を受けない部分は酸化鉄の皮膜に覆われており、「砂漠うるし」とよばれる。風食礫は風の強い地方で卓越風向が一定している所にできやすい。乾燥地域のみならず、海岸砂丘の発達する沿岸地域や大陸氷河周縁部などにもみられる。日本では海岸砂丘地域、伊豆大島の三原山などにある。
[髙山茂美]