おもに海岸からの砂の供給により海岸地帯に形成される砂丘。海岸には波による浸食・堆積作用や塩水化された地下水の影響をうけて,砂質の裸地が生じやすい。ここには波によって絶えまなく供給される砂が,低潮時に乾燥し風によって移動しやすい環境が生じる。日本の海岸では,湿度が低く,風が強い冬から春にかけて砂の移動が活発である。特に北西季節風が海側から海岸に吹きこむ日本海および東シナ海に面する地域や,北西季節風が若狭湾から関ヶ原を通って吹きこむ東海地方沿岸などで砂の移動が著しく,大規模な砂丘が形成されている。現在,多くの海岸砂丘では,砂丘帯の最前線に堆砂垣を設け,ここに砂を集積させて人工砂丘(前砂丘)を形成し,その背後にマツなどを植栽して砂丘の安定化をはかっている。
日本の海岸砂丘は約6000年前の縄文海進時に生じた砂州や浜堤を母体として,5000~3000年前および1800年前以後に著しく発達した。逆に3000~2000年前の間は砂丘は固定化され,その時期に形成された腐植層とも考えられるクロスナ層とよばれる土壌が砂丘をおおった。これらの砂丘の下に更新世の海岸段丘や古砂丘が伏在している場合も少なくない。海岸砂丘の形態は海岸線に平行する砂州を母体とする横砂丘を基本とし,パラボラ砂丘や縦砂丘がその上に重なって発達する場合が多い。
→海岸 →砂丘
執筆者:遠藤 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
海岸地帯に分布し、風によって運ばれて堆積(たいせき)した砂のかたまり。高さは数メートルから数十メートルのものが多いが、まれに100メートルを超えるものがある。砂の供給が多く、海からの卓越風のみられる大河川河口部付近に、比較的良好に発達する。
海岸砂丘は、海岸線に平行する横列砂丘、直交する縦列砂丘や、それらの中間のバルハン型砂丘、ヘアピン型砂丘などの砂丘がある。また基盤を覆って薄く堆積する被覆砂丘とか、黒色砂に覆われた化石砂丘、風によって侵食された侵食砂丘などの呼び名がある。近世以降、人々は飛砂の害を防ぐために防砂垣を設け、松やアカシアなどの造林を行った。このような努力の結果、砂丘地は安定し、畑地として利用されるようになった。
[豊島吉則]
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