馬切り(読み)うまきり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「馬切り」の意味・わかりやすい解説

馬切り
うまきり

歌舞伎(かぶき)劇。時代物。1幕。1794年(寛政6)1月大坂・角(かど)の芝居初演の『傾城青陽(けいせいはるのとり)』(作者辰岡(たつおか)万作)の四幕目「大和橋(やまとばし)」が独立したもの。原作は宇都宮釣天井(つりてんじょう)の事件を太閤記(たいこうき)の世界で脚色した6幕の脚本だが、そのうち、小田三七信孝(おださんしちのぶたか)(松平長七郎を暗示する)が、祠堂金(しどうきん)3000両を積んだ馬を大和橋に待ち受け、馬子を一刀に斬(き)り捨てて金を奪う場面である。単純な筋ながら、信孝の颯爽(さっそう)たる風姿が見どころ。11世片岡仁左衛門(にざえもん)が得意として家の芸「片岡十二集」に選び、以後、同家の襲名披露などでしばしば上演。『三千両黄金蔵入(さんぜんりょうこがねのくらいり)』『三千両初春蔵入(はるのくらいり)』などの名題(なだい)が使われる。

[松井俊諭]

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「馬切り」の解説

馬切り
うまきり

歌舞伎・浄瑠璃外題
初演
嘉永2.1(大坂・中の座)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の馬切りの言及

【宇都宮釣天井事件】より

…実録本《大久保武蔵鐙(あぶみ)》がもとになり,歌舞伎では織田の世界にして,1794年(寛政6)正月大坂の角の芝居で《傾城青陽(はるのとり)》(辰岡万作作)が初演されたのが早い。のちに,この作の一場面が《馬切り》の称で独立,後世に伝わる。明治以後,3世瀬川如皐作《忠孝武蔵鐙》(1869年4月東京中村座),河竹黙阿弥作《宇都宮紅葉釣衾(うつのみやにしきのつりよぎ)》(1874年10月東京守田座),勝諺蔵作《宇都宮新斧手始(うつのみやちよんのてはじめ)》(1875年3月大阪中座),岡鬼太郎作《釣天井》(1922年9月東京明治座),額田六福作《宇都宮城史》など,いくつもの作品が上演された。…

※「馬切り」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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