高次大脳機能のみかた

内科学 第10版 「高次大脳機能のみかた」の解説

高次大脳機能のみかた(神経疾患患者のみかた)

(3)高次大脳機能のみかた
 ここでは失語,失行,失認について評価する.失語(aphasia)はWernicke-Lichtheimの図式に従って古典的な失語症候群が分類されてきたが,言語の下位モジュール構造が明らかになるとともに,古典的症候群の解体と再構成が進んでいる.言語野は右利きでは100%,左利きでも多くの場合,左大脳半球外側面にある.基本的な失語症状としては,表15-1-1に示す4つがあげられる.
 ①は純粋語唖,②は伝導性失語,③と④は超皮質性感覚失語の主症状である.「超皮質性」とは,復唱が正常であるという意味で使われる用語である.これによると,Broca失語は①と③からなる症候群であり,病変の広がりによっては④も伴う.Broca野のみの障害では,非流暢性のBroca失語は出現しない.一方,Wernicke失語は聴理解障害と②,③,④からなる症候群と考えることができる. 内言語の障害では,読み,書きも障害される.発語がない場合でも失書が認められれば,失語と判断できるので,失語の評価には読み書きに異常がないかどうかを加えておく. 失行(apraxia)は随意動作と反射的な動作が乖離して,随意運動ができない状態を指す.肢節運動失行などの運動失行,パントマイム動作ができなくなる観念運動性失行,道具使用ができなくなる観念性失行,構成失行,着衣失行などがある.
 失認(agnosia)は体性感覚,視覚聴覚などの要素的な感覚には異常がないにもかかわらず,これらを統合した認知ができない状態を指し,視覚性,聴覚性,触覚性失認,身体失認,空間失認,さらに片麻痺などの病態を認知できない病態失認などがある.[西澤正豊]
■文献
水澤英洋,宇川義一編著:神経診察:実際とその意義,中外医学社,東京,2011.水野義邦編:神経内科ハンドブック 鑑別診断と治療 第4版,医学書院,東京,2010.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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