意識的あるいはある意図のもとに行う正常の運動をいう。人間をはじめとするあらゆる動物の運動は,随意運動と反射運動とから成り立っているといえる。随意運動を行うためには,命令信号の伝達系としての中枢神経,末梢神経,効果器としての筋肉,腱・骨等に異常がなく正常に働くことが前提となる。随意運動発現の神経機序に関しては数多くの研究が行われているが,いまだに十分に解明されていない。おそらく,外界および内界(体内)からの刺激が,大脳連合野で統合解析されて,運動野に伝達され,ここから錐体路,錐体外路の下行路を経て脊髄の前角運動細胞に伝えられ,筋肉を動かすと思われる。運動の結果は,直ちにいろいろな上行路を経て再び中枢に伝えられて,こまかい調整が行われる。このほかに,円滑な合目的的運動は,下行路の側枝がたとえば小脳を経て運動野に帰るというような複雑な神経回路網の参加があって,はじめて可能になるとも考えられている。なお,不随意運動は,意志や意図と無関係に出現する異常な運動のことをいう。
→運動 →反射
執筆者:大江 千広
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
自分の思いどおりにできる運動動作をいう。随意運動を行うためにはまず運動の意欲をおこし(脳幹網様体と辺縁系が担当する)、この意欲に沿って運動指令のプログラムが組まれ(大脳皮質連合野、大脳基底核、小脳などが担当する)、さらに、これに従ってそれぞれの筋肉へ運動の指令が送られることが必要である。この最後の働きをするのが大脳皮質の運動野と、そこから運動の指令を筋肉まで送る運動神経系である。運動神経系には錐体(すいたい)路と錐体外路があるが、主役を演じるのは錐体路である。しかし、随意運動を巧妙に遂行するうえで錐体外路は不可欠である。また、運動の指令にあっては、筋肉、関節、皮膚などの感覚器から運動の状況を刻々と大脳皮質に情報として知らせるフィードバック(帰還)の仕組みも重要な役割をもっている。なお、随意運動に先だってヒトの脳波にはゆっくりとした陰性波(運動準備電位)がみられる。運動野の錐体細胞の活動はこの運動準備電位に対応してみられるので、運動準備電位はニューロン(神経細胞)に発生する随意的な命令といえる。
[鳥居鎮夫]
…特別な形の運動として,外眼筋の働きで視線をかえる眼球運動や,顔面の表情筋による表情の変化などがある。これらの運動を可能にしている骨格筋はすべて神経の支配を受けているが,大脳の意志に基づく随意運動と,無意識に自動的に生ずる反射運動に分けることもある。
[運動のメカニズム]
(1)関節 身体各部位の位置の変化は,筋収縮により関節を軸とした回転運動に基づく。…
※「随意運動」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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