…これが第1の変化で,シギの肉にナスを取り合わせる形になったが,さらにこれがまったくシギを用いぬナス料理へと変わる。すなわち,室町末期ころのものと思われる《庖丁聞書》の〈鴫壺焼〉は,生のナスを料理して,その上に木の枝でシギの頭をつくって置くというものであった。シギは単に飾りになってしまったのだが,さらに江戸時代に入ると,その飾りさえ省かれてしまうのである。…
…しぎ焼といえば,いまではナスを油で焼いて練りみそをつけて仕上げるのが普通であるが,もともとは当然ながら野鳥のシギを用いたものであった。その変化は室町期の料理書《武家調味故実》に見える〈鴫壺(しぎつぼ)〉,同じ室町期の《庖丁聞書》の〈鴫壺焼〉,そして,江戸時代初期の《料理物語》の〈鴫やき〉の記事によって推移の跡をたどることができる。すなわち,鴫壺は漬けナスの中をくりぬき,そこにシギの肉をつめて煮るものであったが,鴫壺焼になると焼きナスの上に木の枝でシギの頭を作ってのせて出す料理になり,《料理物語》の鴫やきはナスをゆでて適宜に切り,サンショウみそをつけて焼くことになっている。…
※「鴫壺焼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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