日本大百科全書(ニッポニカ) 「黄金の宝壺」の意味・わかりやすい解説
黄金の宝壺
おうごんのたからつぼ
Der goldene Topf aus der neuen Zeit
ドイツ・ロマン派の作家ホフマンのメルヘン風の中編小説。1814年刊。学生アンゼルムスは、町の出口で、リンゴ売りの老婆、実は魔女と衝突したのがきっかけで、魔法の世界に引き込まれる。この世のものとは思えぬ美しい緑の小蛇(へび)、実は火の精の娘ゼルペンティーナに恋し、周りの俗人たちが日常の生活に引き戻そうとしても、非現実の幻想世界を「故郷の地」と認めた彼はゼルペンティーナと結婚して、神秘に満ち、奇跡とまごう国に移り住んでしまう。不気味な形象を混じえる幻想により日常性を批判している作品である。
[深田 甫]
『深田甫訳『ホフマン全集2 黄金の宝壺』(1979・創土社)』