内科学 第10版 「Cushing潰瘍」の解説
Cushing潰瘍(中枢神経系疾患)
1932年にCushingが脳腫瘍術後の食道・胃・十二指腸潰瘍の報告以来,頭部外傷,脳血管障害,脳腫瘍などの中枢神経障害に合併する消化性潰瘍をCushing潰瘍とよぶようになった.中枢神経障害に伴い副交感神経刺激あるいは交感神経麻痺による迷走神経刺激を介して胃酸分泌を亢進させ,胃粘膜の局所血流が低下して消化性潰瘍が生じる.中枢神経疾患発症後3〜7日と比較的短期間で発生すると考えられており,胃病変が多い.意識障害患者が多いこともあり吐血やタール便などの消化管出血症状で発症することが多く,血液検査や貧血所見の有無などにも注意する必要がある.治療は出血性病変であれば必要に応じ内視鏡的止血術などを施し,プロトンポンプ阻害薬やH2受容体拮抗薬(H2 receptor antagonist:H2RA)を投与する.ときに消化管出血が致命的となることがあり,H2RAなどの予防的投与が有効との報告もある.[安藤貴文・後藤秀実]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報