副腎皮質予備能の検査

内科学 第10版の解説

副腎皮質予備能の検査(副腎皮質)

(1)球状層機能
 球状層機能はレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系が主要調節系であるので,検査時の塩分摂取量,水分・Naバランス,体位,レニン-アンジオテンシン系に作用する薬剤(アンジオテンシン変換酵素阻害薬や1型アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬などの降圧薬)の服用は大きく検査結果に影響する.したがって,これらの薬剤を一定期間中止し,一定の塩分摂取と臥位での採血を行う.
a.血漿レニン活性(plasma renin activity:PRA)と血漿アルドステロン濃度(plasma aldosterone concentration:PAC)
 PRAとPACは同時に測定して評価する.PRAが1.0 ng/mL/時以下は低レニン血症である.表12-6-2にPRAとPACの異常値をきたす病態を示す.Addison病など原発性副腎皮質機能低下症ではPRAの異常高値とPACの低下を示す.肝硬変やネフローゼ症候群などの続発性アルドステロン症では,循環血漿量の低下を反映してPRAとPACともに高値となる.アルドステロン産生副腎腺腫(原発性アルドステロン症)では循環血漿量の増加のため,PRAは抑制されPACは高値となる.
b.フロセミド立位負荷試験
フロセミドによる利尿と立位負荷により脱水,腎血流量の低下,交感神経の賦活を介してレニン分泌を刺激し,それによりレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の反応を調べる.
2)方法:
フロセミド40 mgを1回静注し,2時間の立位をとらせる.0,60,120分後にPRAとPACを測定する.
3)判定:
正常ではPRAは前値の2倍以上,かつ2 ng/mL/時以上となる.PRAの頂値が1.0 ng/mL/時以下であれば原発性アルドステロン症が強く疑われる.自律神経障害を伴う糖尿病や加齢ではレニン-アンジオテンシン系の賦活化が障害されPRAは低値となることがあるので注意する.
(2)束状層機能
 束状層機能は視床下部(CRH)-下垂体(ACTH)-副腎皮質(コルチゾール)系のネガティブフィードバック機構により調節されている.ヒドロコルチゾンの補充がされている場合はコルチゾールの測定に干渉しないデキサメタゾンに変更して検査を行う.力価はヒドロコルチゾン:デキサメタゾン=1:40で計算する(ヒドロコルチゾン20 mgの場合,デキサメタゾン0.5 mg朝1回投与に変更する).
a.迅速ACTH負荷試験と迅速結合試験
合成1-24ACTHで副腎皮質を刺激し,コルチゾールの反応を調べる.
2)方法:
合成1-24ACTH 0.25 mgを1回静注し,0,30,60分後に血中コルチゾールを測定する.ステロイド中間代謝物を測定することもある.
3)判定:
本試験を副腎皮質予備能検査として用いる場合にはコルチゾールの上昇が前値よりも5 μg/dL以上,あるいはコルチゾールの絶対値で20 μg/dL以上であれば正常である.
 ACTH-コルチゾール系機能を日内リズム,デキサメタゾン1 mgによる迅速抑制試験,迅速ACTH刺激試験によって総合的に判断する迅速結合試験(rapid combined test)は簡便な試験方法である(図12-6-9).Addison病および続発性副腎皮質機能不全では,早朝の血中コルチゾール濃度は異常低値で,迅速ACTH刺激試験にも無反応である.
b.連続ACTH負荷試験1)原理:
ACTH分泌不全による続発性副腎皮質機能低下症であっても罹病期間が長期になると副腎皮質が萎縮し迅速ACTH試験には低~無反応となる.この場合,連続してACTH刺激を行うとコルチゾールが反応する.
2)方法:
前値として2日間の蓄尿を行い,合成1-24ACTHの亜鉛化水性懸濁液(ACTH-Z)0.5 mgを8時,20時の2回,3日間連続筋注する.筋注後,毎日蓄尿し,尿中17-OHCS,17-KS,血中コルチゾール値を測定する.
3)判定:
正常および続発性副腎不全では尿中17-OHCS,血中コルチゾールが増加する.原発性副腎不全では無反応である.
c.デキサメタゾン抑制試験
1)原理:
デキサメタゾンは高力価のグルココルチコイドであり,正常では少量で下垂体からのACTHをネガティブフイードバックにより抑制する.これを利用してACTHとコルチゾール分泌の自律性の有無を鑑別する検査である.
2)方法:
一晩法( overnight法,Nugent法):23時にデキサメタゾンを1 mg(少量)または8 mg(大量)を経口投与し翌日8時に血中ACTHとコルチゾールを測定する.
3)判定:
Cushing病(下垂体ACTH産生腺腫)やCushing症候群(コルチゾール産生副腎腺腫)ではデキサメタゾン少量ではコルチゾールは抑制されない.デキサメタゾン大量ではCushing病ではコルチゾールは前値の半分以下に抑制されるが,Cushing症候群では抑制されない.例外もある.正常ではデキサメタゾン1 mgでコルチゾールは2〜3 μg/dL以下に抑制される.一部のCushing病では1 mgのデキサメタゾンでは抑制されるものがあるため,0.5 mgのデキサメタゾン抑制試験をスクリーニングとして行うこともある.正常では,0.5 mgでも翌朝のコルチゾールは3.0 μg/dL未満となる.
d. CRH負荷試験(図12-6-10)
1)原理:
CRHは下垂体に直接作用しACTH分泌を促進する.これを利用して下垂体からのACTH分泌能および同時測定するコルチゾールの値から副腎機能を評価する.
2)方法:
ヒトCRH 0.1 mgを1回静注し0,30,60,90,120分後に血中ACTH,コルチゾールを測定する.
3)判定:
正常では血中ACTHは30~60分後に前値の約2倍の頂値に達する.血中コルチゾールもACTHにやや遅れて前値の約2倍の頂値に達する.Cushing症候群ではACTHは前値が低値で,無反応である.異所性ACTH産生腫瘍では前値が高値だが,無反応である.Cushing病ではACTH,コルチゾールともに上昇反応を認める.下垂体性副腎不全ではACTHは無反応となる.Addison病ではACTHは過剰反応を示す.[髙栁涼一]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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