胃潰瘍と同様に,胃液が消化管を消化することによって発生する消化性潰瘍。胃の幽門輪を越えた十二指腸入口から約3cmの間,十二指腸球部と呼ばれる部位に発生する。胃で分泌された胃液は十二指腸液や膵液などで中和されるが,球部では中和が不十分のため潰瘍が発生しやすい。十二指腸下行脚から先は胃酸が十分に中和されるために潰瘍は少ない。とくに胃酸分泌が高度の場合には胃潰瘍の約60%くらいの頻度でみられるが,日本では地域差もあり,南に多くさらに都会に多い傾向がある。年齢も胃潰瘍に比して若年者に多い。
症状は胃潰瘍とほぼ同じで,上腹部痛,胸焼け,吐き気,吐血,下血などである。腹痛は胃酸が高いため胃潰瘍の場合よりも強いことが多く,空腹時痛や飢餓痛と呼ばれている食後数時間で発生する疼痛が特徴的である。痛みは後部に放散し,背部痛を訴えることもある。診断は胃潰瘍と同じで,バリウムをのんで透視するX線検査とファイバースコープを使用する内視鏡検査がある。十二指腸潰瘍は胃液酸度が高いため胃液の測定も重要な検査法の一つである。
十二指腸壁がうすく狭いために穿孔(せんこう),出血および狭窄などの合併症を起こしやすい。穿孔は球部前壁に潰瘍がある場合に起こりやすい。出血は下血を起こすことが多く,便はタール状の黒色便となる。狭窄を起こすと,胃部膨満感や吐き気,嘔吐が起きる。十二指腸に癌が発生することはまれであり,潰瘍の癌化はほとんど考慮する必要はない。
治療は胃潰瘍と同じように食事療法と薬物療法を行う。胃酸が高いために,とくに酸分泌を抑制するような治療が必要である。手術療法も胃潰瘍と同様に広範囲胃切除術と迷走神経切離術が行われる。
執筆者:小越 和栄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
胃液にさらされている十二指腸上部壁の組織欠損で、十二指腸球部にもっとも多くみられる。一般には胃潰瘍とともに消化性潰瘍としている。
[高橋 淳]
…食欲不振,食後の胃のもたれ,吐き気などの症状は,胃排出能が衰えている場合によくみられる。病気との関係は,胃潰瘍は一般に胃排出が遅れ,食べ物が長時間胃に停滞し,逆に十二指腸潰瘍では胃液酸度が高いにもかかわらず胃排出能が強まっているといわれている。胃排出能をしらべることは,潰瘍をはじめ多くの消化器疾患の成因,治療法の確立,潰瘍の再発予防などに重要である。…
…痛みは上腹部から臍部にかけて持続的にみられ,左背部から肩にかけて放散することが多い。膵炎
[穿孔性腹膜炎]
腹膜炎のうちで最も多いもので,胃潰瘍,十二指腸潰瘍の穿孔によって生じるもので潰瘍部が破れて腹腔内に胃内容や腸内容がもれて広範囲に腹膜炎を起こすものである。それまで潰瘍を有している人に多くみられるが,まったく潰瘍を自覚しなかった人にも突然発病することがある。…
※「十二指腸潰瘍」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新