知恵蔵 「MIRAI」の解説
MIRAI
燃料電池車(FCV:Fuel Cell Vehicle)は、燃料電池から得られる電気のエネルギーで走る。燃料電池は、酸素を空気から取り出し、水素は外から燃料として補給するものである。このため、旧来の自動車のガソリンスタンドの代わりに、水素を供給する水素ステーションが必要になる。ステーションは大都市圏など数十カ所が近く開設の予定で、従来のスタンドにも水素を供給する装置を順次設置するとしている。ステーションは高圧で圧縮された可燃性の高い水素を貯蔵し、自動車のタンクに補給する。水素分子は非常に小さく鋼材などに入り込んで強度を低下させる。このため、ステーション、タンク共に高い安全性が求められる。また、何らかの方法で水素を作り出す必要があり、そのためのエネルギーも必要など課題もある。しかし、電気自動車のように長時間の充電は必要ないという利点もある。MIRAIでは、約120リットルの水素タンクに数分間で補給ができ、600キロメートル以上の走行が可能だ。
こうしたことから、次世代の自動車として各自動車メーカーが開発に取り組んでいる。02年にはトヨタ自動車や本田技研工業から、限定的だが実用車が販売され、13年にはヒュンダイ自動車から多目的スポーツ車(SUV)の量産車も発売された。MIRAIの価格は720万円を超えるが、補助金約200万円により実質的には520万円程度、15年末までには国内400台、世界で700台の販売を見込む。数千台規模まで量産が進めば更なる低価格化も図れるという。また、トヨタ自動車は、石油などの化石燃料に代わる新しいエネルギー手段として蓄電池方式を一般化させたいとも構想する。水素燃料の普及に弾みをつけたいと、FCVに関連する特許の実施権を20年末まで無償で提供するとしている。
(金谷俊秀 ライター/2015年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報